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NYで勝負する日本人クリエーターに学ぶ、世界との戦い方

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竹井善昭

プロデューサーGirl Power
ガールパワー・プロデューサー 株式会社ソーシャルプランニング代表取締役 マーケティング・コンサルタント メディア・プロデューサー

エンタテインメントとは民族主義的なビジネス

夢を追い求めてNYやロンドンなど、海外に移住する人は多い。まあ、多いか少ないかは議論が分かれるが、それなりにはいる。しかし、多くの人が夢想するほどには、日本人が世界で戦うのは容易ではない。特にエンタテインメントの世界ではそうだ。それは言葉の問題よりも大きな問題がある。数の論理だ。

誤解を恐れずに言えば、エンタメとはかなり民族主義的な世界だ。ボブ・ディラン、サイモン&ガーファンクル、ビリー・ジョエルなどのプロデュースを手がけてきた世界的な音楽プロデューサーであるフィル・ラモーンがかつてインタビューでこう答えていた。

インタビュアーによる「世界中のアーティストをプロデュースしていますが、もっとも留意していることはなんですか?」という質問に対してフィル・ラモーンは「その人間のBloodyなことだ」と回答している。Bloody、つまり民族的な「血」のことだ。そのアーティストの「血」を活かせなければ、世界で通用する音楽は生まれないと彼は言っている。

この「Bloody」が重要になるのは、オーディエンスがそれを求めるからだとも言える。アメリカは多民族国家ではあるが、民族毎に文化は違う。たとえば、白人のティーンエイジャーは黒人の音楽は聴かなかった。マイケル・ジャクソンの偉大さは、黒人の音楽を白人のティーンエイジャーが聴くようにしたことだが、それまで白人は黒人の音楽を聴かなかった。黒人も白人のカントリーやロックは聴かなかった。

海外ドラマを見ていても、そのあたりのエピソードがよくでてくる。なにかの海外ドラマで、白人と黒人が混じったチームがMTGしているシーンがあった。その中で、黒人女性がある曲の歌詞を引用したセリフをしゃべる。すると白人男性が「それってブルース・スプリングスティーンだよね?」と驚く。それを受けて黒人女性が「なによ? 黒人がブルース・スプリングスティーンを聴いちゃ悪いの?」と返すシーンがある。

これなど、まさにアメリカ社会において黒人が、ましてや黒人女性がブルース・スプリングスティーンなど聴かないという通念があるから成り立つシーンである。

このようなエンタメの民族性は政治的に利用されることもある。90年代後半、アメリカではヒスパニック問題が大きな社会問題になっていた。そして2000年、カルロス・サンタナがグラミー賞において「Album of the Yea」や「Record of the Year」など8部門で受賞した。カルロス・サンタナはロック界のレジェンドであり、70年代は大ヒットを連発していた。その名で分かるとおりヒスパニック系にとっては英雄だ。しかし、80年頃からその活動はパッとしたものでは無かった。そんなサンタナがいきなり大ヒットを飛ばして復活。グラミー賞では過去最多となる8部門を受賞した。これは、ヒスパニック問題で揺れていたアメリカ社会において、ヒスパニック問題を沈静化するための政策だったともわれる。もちろん真相は分からない。しかし、そのような噂がまことしやかに流れるくらい、エンタメの世界も政治的だということだ。

エンタメ業界にはそのような背景があり事情がある。だからこそ今年、韓国の防弾少年団(BTS)がビルボードのアルバム・チャートで1位を獲得したことは偉業だと思う。

 

正直に言って、僕はBTSがなぜアメリカで売れたのか理解ができていない。ラスト・ベルトの白人ティーンエイジャーの女の子がBTSに熱を上げるなどちょっと考えられない。考えられることは、ビルボードのチャートに影響するほど、アメリカで韓国人、中国人などのアジア系が増えたということくらいだ。もしかしたらゲイの人たちが韓国の美少年たちに萌えたとういうのもあるかもしれない。もともと韓国の音楽アーティストはアメリカの黒人音楽といろいろな意味で親和性が高いという要素も効いたのかもしれない。いずれにしても推測の域を出ないし、アジアからアメリカのヒット・チャート1位を取れるアーティストが出てきたことは喜ばしいが、だからと言ってこれで日本からもアメリカで通用するアーティストが生まれるかというとそうは簡単にはいかないと思う。

日本のカルチャーもアメリカではずいぶんとメジャーにはなってきている。アメリカ制作のドラマにも日本のカルチャーに関連したエピソードがよく挿入されるし、日本独自の「怪獣」も「GODZILLA」や「パシフィック・リム」などのハリウッド映画のおかげでメジャーな存在になってきている。しかし、それでも日本人の数は世界的に見れば少数だし、その意味ではけっしてメジャーな存在ではない。だから、アメリカのエンタメ業界で日本人が勝負するのはたいへんなのだ。ヘア・メイクのアーティストやCGクリエーターなどのスタッフならともかく、作品をプロデュースすることは困難だ。

しかし、その困難さに挑む日本人チームがある。NYを拠点としたクリエーター・チーム「Derrrrruq!!!(デルック)」だ。

NYから世界に挑む日本人クリエーター・チーム「Derrrrruq!!!(デルック)」

「Derrrrruq!!!(デルック)」は二人の日本人女性とゲイの日本人=川出真理、本田真穂、近藤司による三人のクリエーター・チームだ。「出る杭は打たれる」の「出る杭」からきた名称である。

本田真穂は元東レキャンペーンガール。日本でモデルとして活動した後、2009年に渡米しNYを拠点にモデル、俳優として活動している。Derrrrruq!!!(デルック)作品ではプロデューサーと主演を兼務。ゲイの近藤司はプロデューサーと脚本を勤め本田と共に作品に出演もしている。そして川出真理はプロデューサーと監督を務めている。

現在まで「2ndアベニュ-」(以下二アベ)という作品を制作しウェブで配信中。そして、第二弾となる「報道バズ」を制作中だ。

「二アベ」は、日本でグラビア・アイドルをしていた女の子が女優を目指してNYにやってくる。そして、ゲイの男性とルームメイトになり、ゲイ男性との関係性に戸惑いながら、夢を追いかけるドラマで、アメリカにおける移民問題や、NYにおける多様性の問題、そしてアメリカで日本人が夢を追いかけることの困難さなど多様な問題をコミカルに描くコメディだ。本田真穂が演じる主人公の女の子がけっこうおバカ(物語の最後までバカ)で笑える。ネットで配信されているのでぜひご覧いただきたい。

「二アベ」

第Ⅰ話

第2話

第3話

第4話

第5話

第6話

女子アナを主人公に日本のメディアをめぐるさまざまな問題を問いかける!

現在は第二作となる「報道バズ」を制作中。1作目の「二アベ」はグラビア・アイドルが主人公だったが、今回は女子アナが主人公だ。

セクハラや局内での扱われ方に悩むバラエティ出身の元女性アナウンサーが、心機一転ニューヨークのニュースアプリ会社に再就職するところから物語が始まる、日米合作のエンターテイメント作品。新人ジャーナリストとなる彼女と、彼女 を取り巻く個性派キャラクターたちの目線を通して、日本における女性の扱われ方、メディアの在り方に対しユーモアあ ふれる手法で問いを投げかけます。従来の日本のドラマとは異なるテンポ、カメラワーク、音楽の使い方を取り入れた、日本人が主人公の海外ドラマ。全編ニューヨーク撮影。シーズン1、全6話。

https://www.derrrrruq.com/copy-of-english

という作品だが、考えてみれば、グラビア・アイドルも女子アナも極めて日本的な存在だ。アメリカにもピンナップ・ガールというのもがあるが、グラビア・アイドルとは似て非なるものというか、立ち位置がちょっと違うと思う。また「女子アナ」という概念は欧米にはないだろう。言うまでもないが「女子アナ」と「女性アナウンサー」はまったくの別モノだ。

そのような、日本特有の「女の子的職業」の女性がNYに新しい活路を求めて渡米する。そこには大きな意味があると思う。日本社会では当たり前と思うことも、アメリカ社会に置いてみればおかしいと感じることもあるし、日本のなにがアメリカや世界で通用するのか、しないのか、それを考える参考になる。

Derrrrruq!!!(デルック)作品は「二アベ」も「報道バズ」も、日本人がNYで制作した日本人が主人公で、日本語が主体の作品だ。その狙いや意味を、プロデューサーで監督でのある川出真理氏に聞いてみた。

Derrrrruq!!!(デルック)のメンバー。中央が川出真理氏。

川出氏は、もともと高校生の頃から映画好きで、20代でアメリカに留学したときもアート・スクールでフィルム・メイキングのクラスに入った。そこで多種多様なバックグラウンドを持つ人たちとコラボして作品を作る体験をしたが、それでエンタメ業界で職を得ることが難しく、「食べていけない」といったんは帰国。音楽関係の企業に就職するが、このままでは後悔する、夢をかなえると2007年に再び渡米。そして、他の二人と出会いDerrrrruq!!!(デルック)を結成した。

当初はNYから発信することもあって、世界に向けての作品作りを考えていた。しかし、三人でミーティングを重ねるうちに、NYの日本人だから見えてくること、できることがあると分かってきたという。NYから見るからこそ、日本人が避けて通る話題も見えるし、扱えることもある。そこに、日本人としての自分たちのオリジナリティがあると考えたという。

その発想は僕も正しいと思う。日本人が白人や黒人の真似をしてもけっして勝てはしない。また、日本人が日本からの視点で作品を作っても、世界で通用するものはなかなか生み出せない。NYからの視点で「日本」を描くからこそ、世界に通用する作品が生み出せるのではないか。少なくとも、世界的にはマイノリティである日本人が世界で勝負するひとつの方法論ではないかと思う。

川出氏も言う。「マイノリティ同士だから理解し合えることもある」と。「二アベ」もさまざまな国からの移民たちによく見てもらえているという。マイノリティの視点で、白人とは違う視点だか描けることがあるということだ。

日本で生活していると実感しにくいが、日本人は「日本人はマイノリティである」ことを理解したほうがいい。その自覚がなければ、世界で通用するものをこれからの時代、生み出せないと思う。防弾少年団が世界で成功したのも、韓国の芸能界が「自分たちはマイノリティである」という自覚から、必至になって世界で戦うためにはどうすればいいか考え努力してきた結果だ。

そのことを実感して理解するためにも、Derrrrruq!!!(デルック)の作品「二アベ」を。そして、これから公開予定の「報道バズ」をぜひ観て欲しい。日本人を、そして日本の社会を客観視するきっかけになるはずだから。

また「報道バズ」では、誰もが感じていながら日本のマス・メディアではけっして伝えない問題も扱っている。それがなにかは、僕もまだメディア業界にいるのでここでは書かない。しかし「報道バズ」はNYから発信しているからこそ、そこを描けるし、それだけでも大きな意味がある作品になるはずだ。期待したい。

「報道バズ」はすでに撮影が終了。現在は編集とポスト・プロダクションの作業中だが、その編集、ポスプロの費用をクラウドファンディングで募集中だ。この作品を見たいという方は、ぜひご協力をお願いします。

「報道バズ」詳細とクラウドファンディングのサイトはこちら

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竹井善昭

CSRコンサルタント、マーケティング・コンサルタント、メディア・プロデューサー。一般社団法人日本女子力推進事業団(ガール・パワー)プロデューサー。

ダイヤモンド・オンラインにて「社会貢献でメシを食うNEXT」連載中。
http://diamond.jp/category/s-social_consumer
◇著書◇「社会貢献でメシを食う」「ジャパニーズ・スピリッツの開国力」(共にダイヤモンド社)。 ◇翻訳書◇「最高の自分が見つかる授業」(Dr.ジョン・ディマティーニ著、フォレスト出版刊)

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