「ねえ、聞いて。職場で役職に昇進するように打診があったんだけど、気が重いのよ。今は子供はいないけど、できるかもしれないし。なんか大変になるだけのような気がするのよね。どうしよう」
同じような相談を、何度か持ちかけられたことがあります。
政府は、女性活躍推進と銘打って、女性の役職者を増やすようにと勧告していますが、当の女性たちは、「わーい、出世できる」などと手放しで喜べる心境ではない人が実際は多そうです。
出世することにより、今までの男性社会の歯車の中に無理矢理自分を押し込めて、自分を犠牲にして働くことには疑問を感じるのでしょう。
また、高学歴で優秀な女性でも、キャリアを目指さずに、一般職を選ぶという事も少なからずみられるようです。
どんな働き方を選ぶかは本人の自由ですが、もしも、本当はやりたいことがあるのに、本当はもっと自分の可能性を試して輝いてみたいと思っているのに、男性に煙たがられないように、目立たないようにとまわりを気にしたり、キャリアは大変そうだし、目指したいロールモデルもいないからと最初から飛び込むのを閉じてしまっていたりするとしたら、何だかもったいない気がします。
日本は、先進国の中でも女性の進学率が最も高い国だといいます。
なのに、出産を機になんと7割もの人が仕事を辞めてしまうのだとか。
他の先進国では、共働きをしながらでも、どちらかに過度に負担がかかりすぎないパートナーシップの形が進んでいるのに、日本はいまだ結婚後の家事労働を女性が長時間担うというスタイルに大きな変化がみられないのも原因でしょう。
女性活用推進をするなら、男性主体に作られた既存のスタイルに単に女性を当てはめるのではなく、その器自体を新しく変えていかないといけないでしょうし、その器づくりは、当然女性リーダーの意見が反映されるべき。でも、なかなか女性リーダーが育っていかない。
器ができていないしロールモデルがないから?それだと卵と鶏論のように、いつまでたっても埒があきません。
90年代。大学生だった私は、ジェンダー論のクラスが面白く、興味をもって取り組んでいました。
一昔前、男女平等がうたわれ、女性の社会進出が進んでいく中、男性に負けじと自分を犠牲にしながらバリバリと頑張る女性の増えた時代があったかと思います。
その結果、幸せと感じる女性も増えたか?というと、YES!とは言い難い状況があったでしょう。
既存の男性優位のビジネス社会の中で女性が戦おうとすれば、男性以上に頑張り、場合によっては家事もこなしながら、女性としての美や楽しみも制限しなければならないこともあったかもしれません。
結婚や出産のタイミングを逃してしまうリスクもあります。
そんな世代を見てきた次の世代が、キャリアに邁進することに疑問を感じても不思議ではありません。
「女性が男性化して戦わなければならない、権利の上での男女平等ではなく、女性の良さを生かしながら生産性を上げていく新たな枠組み作りが必要。」
そんな内容を話し合っていた講義でした。
あれから20年もの時が流れ、女性が働くこと自体は普通になりましたが、女性リーダーが多く増えたか?というと、状況はあまり変わってないようです。
一方、企業という枠ではなく、家庭に入りながらも、できる範囲で起業をして稼ぐ女性は増えています。インターネットの普及もあり、プチ起業しやすい土台ができました。
そういった起業スタイルが向いている人もいれば、大きな組織の中でこそ自分を生かせるタイプもいるでしょう。
自分に合っているスタイルを選べた方が本人の充実度は高くなりますが、とりあえず結婚、仕方なく退社と、まわりに流され自分の本心を無視して進むと、やはりどこかで違和感を覚えてしまいそう。
そもそもの職業選びの際に、もっとこうしておけば、と後から思うこともあるかもしれません。
主婦という生き方が本当に合っている人もいるでしょうが、仕事に生きるのは大変そうだからという理由で結婚に逃げようとしても、共働きをしないと厳しい世帯が増えているのも現状です。
自分をどうしたら生かせるのか?ということをおざなりにして、依存的な考え方でいたり、
不安からの選択で生き方を決めてしまったりすると、うまくいかない時に、本当に苦しくなってしまう気がします。
キャリア女子、女性リーダーが育ちにくい一方で、「貧困女子」と呼ばれる層が拡大している現状に対し、今一度、既存の枠に縛られず、自分の可能性にチャレンジすることをあきらめない勇気を持った女子のチカラが必要とされているのでは。
ロールモデルといっても、結婚や出産のタイミングなどは計ったように進められるものではないですし、同じ一人であっても、そのライフステージよって、仕事との関わり方が変わってくるのも仕方ありません。
まわりがどうあれキャリア道を進むのも本人の意志。
そうなれば、「ロールモデルは自分で生み出す!」くらいの柔軟な創造力があった方がいい。
その時に、自分の指針となってくるものが、自分は何を大切にして、何なら自然と頑張れて続けられるのかという、深い部分での価値観に添った自分の軸だと思うのです。
仕事も生き方も、それを満たすような事、スタイルを選んでいくと、紆余曲折があったとしても、長い目で見て、自分らしく心を定めていけるのではないでしょうか。
女子は本来、心地のいい環境を、その手元から生み出し、分かち合い、繋げていくチカラをきっと持っている。
どの既存の枠に入ろうか?ということに悩んだり、最初から制限をもうけた中での選択に迷ったりして、今のままをグルグルしてしまうのなら、一度、枠を壊す、枠はつくればいい!と視点を変えてみることが必要なのではないかと思います。
自分をつくる、革命。
一緒に考えていきましょう。