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女性の心と身体(4)50代をいかに生きるかが大切…..対談:対馬ルリ子&勝 恵子

◎閉経後の生き方を作るのは私たち自身

 女性の寿命が延びたことによって、閉経時期は変わらないのに閉経後の年数が長くなったといわれます。長くなった閉経後の生き方を考えなければならない時代になりました。どうしたらいいのでしょう。

対馬 正解はありません。欧米は日本よりずっと前から高齢化していますし、女性が働くことも一般化していますが、現在は日本のほうが圧倒的に長寿社会になっています。女性にとって80代以上のQOL(Quality Of Life)をどう実現するかというのは、まず日本人の問題です。
今の日本の女性の現状は、死に至る最後の13年間を幸せとは感じられず過ごしている現状です(不健康期間)。認知症、骨粗しょう症、フレイル( 健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態)等、まったく楽しくない状態で約13年間を過ごさなければならない状態です。それをどのように予防できるかクリアできるかを、私たちが実証しなければなりません。

 今50代、60代の私たちがどのように生きているかによって、女性の未来が託されているわけですよね。

対馬 私たちが未来の13年間を少しでも変えていくことができるよう、最後の70代、80代を若々しく楽しい人生だったと感じられるよう、楽しく生きて世界中のお手本となりましょう。

 未知なる挑戦ですよね。日本女性の平均寿命は87歳で世界トップクラスですが、健康寿命は75歳。これから高齢となる私たち世代の課題ですね。その中で女性ホルモンを使っておくことも大切なのでしょうか。

対馬 学術的にも、50代の女性がホルモン補充療法を使うことで、後々まで認知症が減少する、骨粗鬆症による骨折も減少するというデータが出されています。ヨーロッパの女性はホルモンを長く使いますが、目的としてはカップルの生活を楽しむためや美容のため、健康のためです。ヨーロッパの文化ともいえます。
日本人も、50代の女性が固い殻を脱ぎ捨てて、もっと柔らかく美しくなると、ホルモンも漢方も美容技術も使えて、将来の70〜80代を楽しめると思います。

◎人生は「アムール」のためにある

 たとえば、恋人をつくるというのはいかがですか。

対馬 もちろん大事です。ディスカッション好きなフランス人は、人生は何のためにあるのか度々話し合い、「人生はアムールのためにある」と言います。
恋人だけでなく、家族も友人も含めての「アムール(愛)」です。人は人生を楽しむために産まれてきて、最後まで人生を楽しむという強い決意に似たものがフランス人のライフスタイルに存在しています。

日本人も、生を受けた意味、生きる価値・目的を考えておいたほうがいいですよね。

 75歳以上の後期高齢者世代の女性に尋ねると、「人生においてもうやることがない」とおっしゃる方があります。「子育ても終わったし」と言うんですね。

対馬 「子育ても終わったし」という言葉は、自分の人生が子育てのためにあると思っているからでもありますが、子育てって50代で終わりますからね。しかも中には、子どもにさんざ手をかけて、ある意味ろくでもないオヤジを育ててしまい、そのオヤジがセクハラをしたりするわけです。

 女性がもっと自分に興味を持って自分のことをすればいいのに、なぜだか人のお世話ばかりしている日本の女性が多いですよね。

対馬 やみくもにお世話するのではなくて、自分自身が豊かになり、快適であり、エネルギーがいっぱいと感じられる時に、それを人に分けてあげればいい。よくある更年期のパターンとして、自分のことは置いて、他者のため人のためにと奔走しては苦しんでいる人があります。彼女たちが抱える悩みは、親のこと、夫の浮気、娘や孫が言うことをきかないという、すべて他者にかんする悩みであって、「あなた自身は?」と尋ねることもありますよ。

 親も夫も子どもも、大切ではありますが、自分自身の悩みではありませんよね。更年期で悩む彼女たちはどうしたらいいのでしょう。

対馬 更年期の不快症状は、これをなんとか変えなきゃというきっかけにすることができます。50代に苦しい思いをして、そこで変わるきっかけにもなりますよね。

 今の50代はワガママな人も増えていると感じますから、昔の日本女性より自由度が高いのではないかと思うことがあります。

対馬 私の妹はバブル世代ですが、子育て終わってまたバブル期と同じになっていますよ(笑)。パリピになって、ロングドレスを着て楽しんでいます。もちろんそれも良いことですが、ただ楽しいだけでなく、もう少し進歩して、社会のために、世界のために、次世代のためにと、人間として成熟した次の発達段階があればいいなと思います。

 それを行わせていただいているのが私たち「Girl Power」でもあります。10代、20代の女性に伝えていきたいと思います。男性が作った組織の中で言うなりになるのではなくて、自分で決めることができる女性に増えていただきたい。

対馬 今の日本は男性も女性もみんな頑張って、くたくたになるまで働いて、女性は疲弊し、出産を機に辞める人もあります。かたや男性は、休む間もなく頑張り続けて過労死したり。いずれにしてもただ頑張るだけでは楽しくありませんよね。

◎仕事を続けるためにも大切な「ゆらぎ」

 対馬先生がおっしゃっていた、女性には「ゆらぎ」があるからこそ仕事も長く続けられるこという視点が大切ですよね。

対馬 子育て期ペースダウン、更年期ペースダウン、また別の負荷がかかったときにはペースダウンしていいんです。逆に、仕事をがんがんやりたいときは仕事に集中する。そういった感じでゆらいで、緩急付けて続ける仕事でしたら、楽しむこともできます。
男性だってそうですよね。休んだこともなければ、他の世界を見たこともないまま仕事だけに邁進し、引退すると何もすることがなくなって妻の後追いをする「濡れ落ち葉」になるのは気の毒ですよね。

 女性は月経によって心身共に変わりますよね。たとえば仕事で大事なプレゼンを行うときは身体やホルモンの状態がいい時に行うとか、コントロールできるといいのにと思います。

対馬 多くの女性は、まわりに自分を合わせて働いていますが、自分にまわりを合わせさせてもいいと思いますよ。女性も個々それぞれ違いがありますから「私はこういう状態で仕事をしたほうがいい仕事ができます」と言えばいい。
体調の悪さを言葉にしないまま、イライラやぼーっとしている面を職場で表してしまうと、なんだか変な人と思われかねません。それは不幸なことです。

 まわりが女性の更年期に理解がないために、「変な人」と誤解されたり人格の問題とされてしまうわけですね。男性に理解してもらうためには、やはり子どもの頃からの教育も必要だと思います。

対馬 私立中学に出向いて「ライフサイクル講座」を行っています。10代の身体のしくみやホルモンについてだけでなく、今後大人になり身体はどうなっていくのか、人生のステージの変化を伝え、更年期があり、出産できなくなり、その後の人生といった、100年人生から今現在を語ることによって、10代のときに行うこと・気をつけておくことを知って、適切な年齢での出産を考えてもらう。

 素敵な授業ですね。私立中学だけでなく、ぜひ公立中学のカリキュラムにも入れていただけるよう、対馬先生から文部科学相にお話してください。

対馬 政治家から言わせると、民間から求めている内容が明確に上がってこなければ政治家は何もできないと言います。

 では、対馬先生とガールパワーで、政府に提言させていただきましょう。

対馬 女性が子ども産める、活躍できる、幸せな人生を送るために大切なことですと伝えていきたい。それは、前エコノミスト編集長ビル・エモット氏の著作『日本の未来は女性が決める』にも書かれています。日本は今がけっぷち、少子高齢化で生産人口も減少している。国のパワーは、人数だけでなく活力ある暮らしのできる社会でなければ国は消滅してしまいます。

◎行動と経験からリテラシーは身につく


 対馬先生がおっしゃるヘルスリテラシ−も大切ですし、私はメディアの人間ですので、メディアリテラシーも大切だと感じています。リテラシーを身につけるにはやはり教育でしょうか。

対馬 リテラシーは頭で考えるだけでなく、やってみることで理解が進みます。
女性であれば、月経とどうつきあっていくか考えることもリテラシーとなりますし、座学だけでなく経験をいかして学びたいことを見つけるというのも大事です。
もちろん、教育が一番大事ですが、日本の公教育は画一的で、150年前から変わっていない体制です。もっと一人一人が「自分の人生の意味はなにか」と考えられるような社会が求められます。

 海外と比べると、日本はアクティビティの授業が少ないですよね。

対馬 日本の学校では、生徒は授業中に話してはいけない、意見を言ってはいけない、給食も掃除の時間も寡黙でなければなりません。それでは食事も楽しくないでしょう。
たとえばイギリスなど、国の力があるところは教育の力もあります。

◎日本の義務教育には弊害もある

 日本の義務教育は居心地の良くない面があります。小学校の頃には協調性ばかり重視されていると感じました。

対馬 欧米の教育では、「あなたは他の子と違ってなにができる?」「なにをしたいの?」と繰り返し尋ねます。それを何年も続けます。
「私はコレをやりたい」と言葉にしたら、それでいいと受け入れて、「どうやってやる?」と尋ねてくれる教育です。対して、日本のように、最初から「コレをやりなさい」と押しつけられ、「できなければ罰を与える」となると、子どもたちは萎縮しますよね。10年もそれが続くと教育の結果はおのずと違ってきます。

 日本では減点方式だから、自己評価も低くなってしまうのでしょうか。
「Girl Power」では、やりたいことがやりたいようにできる女性になろうと提案しています。

対馬 勝さんは、思いっきりのワガママってしたことがありますか?
私は、超遠大な「人生のやりたいこと」を思ったことがあります。それは、「私がどんなワガママを言っても目立たないくらい、まわりの人がワガママであればいい」。そういう世の中になるよう願ったのが小学生、中学生くらいの原点でした。田舎で育ったものですから、私の親は私に対して何も言わなくても、まわりの人がさまざまなことを言うんですよね。

 日本は同調圧力が強いためでしょうか、社会のどの分野でも女性の姿が見えないことがあります。教育レベルも高いのにもったいないと感じます。女性はどこでストップがかかるのでしょう。

対馬 医学部の場合は、入試でトップの成績を修めるのは女性です。かつて問題となった某医科大学や他大学でも不当な操作が行われて女子学生は不利な立場におかれています。それでも、卒業時のトップも女性です。
ところが、医師となってから、妊娠出産によって辞める女性は多くいます。まるで腰掛け社員のようですが、そうなる理由は3つあります。
まず、きちんとトレーニングを受けさせてもらえない。あるいは、トレーニングが苦しくて辞める女性があり、さらに、結婚するとパートナーが辞めろという場合もあります。出産し子どもがいるんだから母親は家にいろ、と言われる女医が7割もいます。

◎女性産婦人科医が増えている

 勤務のしやすさや時間の制限が少ない眼科医や皮膚科医となられる女性が多いのでしょうか。

対馬 ところが、多くいる眼科や皮膚科なのに、きちんと仕事のできる女性はまだ少ない。某私立大学病院では、毎年50人の女医が入局してもじゅうぶんトレーニングを受けることができないため仕事ができるよう育てられません。
整形外科や脳外科は、いまだに「女が来るところではない」と言われる。それなりに体力や腕力が必要だからでしょうか、私が産婦人科に入ったときも「女には無理だ」と言われました。お産は24時間体制ですし、救急もありますし、手術はガンなどの手術が多いからです。
でも今は、40歳以下の産婦人科医では7割が女性となっています。産婦人科の業務の大変さに辞めるのは男性医師で、女性は当事者のため辞める人がすくない。

勝 医療現場の中でも特に産婦人科に女性が急増した理由はありますか。

対馬 2004年の「大野病院事件」です。帝王切開を受けた産婦が死亡し執刀医が2006年に逮捕起訴されました。そのショッキングな出来事を受けて、日本中の産婦人科から男性医師が辞め、産婦人科病院も1年で1000軒閉鎖されました。
私たち産婦人科医は身体を張って手術を行っています。帝王切開時に出血多量で間に合わない悲しいこともあるが頑張ろうと努めているのに、執刀医が勤務中に逮捕されたのはあまりに大きな衝撃でした。2008年には無罪判決が確定しましたが、すでに多くの男性医師が辞めた後でした。

 小児科医が減っているのと似ているのでしょうか。男性が辞めたために女性が増えたというのは少し皮肉なことですね。

対馬 医療業界に限らないようですよ。アイスランドの男女共同参画担当大臣が来日しインタビューの中で話したことがあります。アイスランドの金融危機は、女性リーダーが増えた歴史的な出来事。男性が逃げ出す危機のときには、女性にとってはチャンスだと感じます。

 今は、日本の女性にとってチャンスかもしれませんね。男性が疲れて逃げ出し気味です。
女性医師が増えるだけでなく、LGBTの医師も増えていますか。

対馬 LGBTの医者は、産婦人科でも増えてきています。産婦人科医も古い体質ですので、医師向けのリプロダクティブヘルスのアンケートを実施しようという話になったとき、アンケート項目に「男」「女」だけでなく「その他」も必要だと思うと私は提案しました。
そもそも、生まれてくる赤ちゃんには半陰陽など一定数あることですし、身体の性と心の性の違いや、生まれたときの染色体、性器の違いもありますから、もともとあるバリエーションだと私は理解しています。
ホルモンにかんして言えば、50代女性に減少した女性ホルモンより60代男性の持つ女性ホルモンのほうが多いです。女性も両性のよい所を持っていてよいと思います。

◎女性の美しさは「ゴキゲン」にある

 50代で元気がなくなっていく女性もあれば、70代で元気な女性もある。
環境や性質にもよるのでしょうが、身体と気持ちの変化も感じられます。変化していくとき、身体と心はどちらが先ですか。

対馬 身体が先です。まず「生きる」ことが先で、考える脳は後でくっついたものですので、生きていく脳と生きるためのファンクション(機能)が先です。
たとえば、ネガティブなことを考え続けていると生きる力が減ってきますよね。性ホルモンも落ちていきます。性ホルモンは、視床下部、下垂体型、大脳辺緑系といって感情や記憶、生き延びるためのものと一体になっていて、ホルモン機能と一緒になっているため、その下にある自律神経やホルモンもすべて下がっていきます。

 ネガティブな気持ちは、想像以上に身体にダメージを与えているんですね。
自分できりかえる術(すべ)を身につけていかなければなりませんね。

対馬 そうですよ。「自分はダメな人だ」と思い続けることは、まるでゆっくり自殺しているようなものです。

 人様の悪口を言うこともいけませんね。美しくありません。

対馬 女性の美しさは「ゴキゲン」であることだと思います。ゴキゲンな人にはまわりの人も惹きつけられますよね。

 対馬先生の笑顔はいつも素敵ですし、楽しそうにお話くださいます。ご自身をいい状態に保つためにどういったことをなさっていらっしゃいますか。

対馬 自分自身が楽しいと思うこと、ワクワクすることを行っています。

 お仕事をしていらっしゃる中でさまざまあることと思いますが、たとえば、子育てと仕事がぶつかったときは、どのように環境を作っていらっしゃいましたか。

対馬 私自身が環境作りをしたわけではなくて、やりたいことをやっているうちに、まわりがしかたないからと合わせてくれたんです。たとえば、私は子育て中にも病院勤務をしていましたが、当直が月6〜8回あります。それは職業上しかたのないことですので、家人やまわりの人たちが対応してくれました。

 きちんと主張なさったわけですよね。Girl Powerでも、「女性が自分らしく生きていくために」を目標としていますが、マインドセットを変えるために何が必要でしょう?

対馬
 人を変えようとするなら、まず自分が変わることです。
楽しそうにしていると人が集まってくる。顔をしかめている人には誰も寄ってきませんよね。自分の中にある力を信じることです。

◎50代の女性たちへ提案「これから世界に出よう」

 最後になりますが、女性が元気になるために、対馬先生からエールをお願いします。

対馬 思い切りワガママに生きるつもりでやってみてはいかがでしょう。
自分にはできない、自分には無理と思っていらっしゃることが日本人には多いと感じます。
娘の学校で私も教えてもらいました。「天は自ら限るものを限る(天は自ら助くる者を助く)」。できないことはない、あらゆること、自分のやりたいことは全部できます。
昔の人は50年だった人生が今は100年あります。焦らずじっくりと取り組みましょう。

 日本では特に、どの分野でも女性が見えないと感じます。教育レベルも高いのに、もったいないことですよね。
かくいう私も、自分勝手に生きてきたのが「ブレーキ」がかかったと感じたのは母親になってからです。39歳で母親となり、まわりの人を見て、母親なのだから好き勝手な時間を過ごしてはいけないと10年間くらい囚われていました。

対馬 子どもにとっても、母親は萎縮せず伸び伸びしているほうがいいですよ。
私は産婦人科医として、以前は赤ちゃんより断然お母さんの生き方に関心がありましたが、年齢が上がってきて自分が弱ってパワーがなくなってきたと感じる最近は、赤ちゃんを見ると癒やされるようになりましたね(笑)
今は、お母さんとパパ、家族皆で赤ちゃんを迎えるのを見るといいなあと思いますし、苦労して無事に生まれてきた赤ちゃんが、しみじみ愛おしく感じるようになりました。

 小さな赤ちゃんだけでなく、今は、花が咲いているだけで癒やされます(笑)

対馬 そうですよね。昔は、花が咲いていても花だなとしか思わなかったのに(笑)。今ではかわいいと感じられます。いろんな人や物の弱さが愛おしいと感じられるのも成熟の証かもしれませんね。
たとえば、お年寄りの手を引いてあげたり、赤ちゃんを抱っこしたという経験から、愛や優しさが生まれますから、生活のなかで少しでも経験を積んでほしいですよね。人生は長いから今から勉強や経験をしてもいい。
50代以上の女性には、「これから世界に出よう」という提案をします。

 大人のフィールドワークですね。「これから世界に出よう」とても素敵なメッセージです。
対馬先生、この度はお忙しいなか長時間に渡るお話ありがとうございました。ーーーーーー(了)

女性の心と身体(1)

#対馬ルリ子 #勝恵子 #女性ホルモン #女性の心と身体 #ガールパワー

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