日本人はもはや上客ではない? バリで感じる、日本に対する対応の変化
「コンニチハ!ヨウコソイラッシャイマシタ!」
ホテルに到着、フロントのバリホテルスタッフが片言の日本語で私たち家族を迎えてくれた。
現在ホリデーのため到着したバリからこの記事を書いている。
海外に行く度に考えさせられる「おもてなし(ホスピタリティ)サービス」。
冒頭のスタッフのように、我々を瞬時に日本人と判断し我々の母国語で出迎えてくれるとやはり親近感が湧き、何だか旅の疲れも癒される。
バリは観光地であるため、様々な国の人を観光客として受け入れ稼いでいる。
現在のバリ観光客事情は、訪問者数NO.1は「オーストラリア人」約93万人。次いで、「中国人」約68万人。3位に我々「日本人」だ。数は、ぐっと減り22万人である。
*2015年度インドネシア共和国観光省調べ
数年前まで日本人は上客だったのだが、(2012年までは観光客全体シェア30%だった)年々日本人とロシア人観光客は減っている。他国は、年々上昇しているのに、だ。
それは、現地の人の反応からも読み取れる。
私は海外のどこにいても、「君は日本人だね」と言われるのが当然だったのだが、昨年からバリニーズの反応がどうもおかしい(笑)。
昨年のバリウブドで、2人のバリニーズおやじから「You are from Singapore, right?」とのこと。違うし、、。From Japanというと、すぐさま「コンニチハ!」と返ってくる。調子がよい。
今年といえば、昨日立ち寄ったショッピングモールのおばちゃんたちから「You look like Chinese!」とのこと。違うし、、。「Do I??」と返すと、「Yep!」とのこと。笑
これらの反応から、日本人が上客でなくなってきてることを実感した。
日本人観光客が減る一方、増え続ける観光客への対応を柔軟に行う。恐らく、日本人観光客が圧倒的に多かった時代は、他国の人に間違われることはなかったはずだ。
客層の変化に機敏に対応するバリニーズ
そんな目減りする日本人観光客である私に対して、日本語でしっかり受け答えできる現地の方達はまだまだ存在する。(旧上客だったので日本語を勉強していた方も多い)
一方で、現在上客であるオーストラリア人と中国人への対応もバリニーズは心得ている。
どこに行っても英語が通用するし、中国語を駆使しているバリニーズも多く存在する。
もちろん、ウブドの山奥など田舎では英語が通じないスタッフもいることは事実だ。
言葉だけではない。
食もしっかり対応している。アジア料理の中に、パスタとピザがメニューの中にある。(道沿いにある屋台には用意がない場合があるが)現地人が作ったパスタとピザなので、味は劣るがアジア料理に飽きたときにたまに食べるのもよい。お酒も豊富になってきている。ワインは近場のオストラリア・ニュージーランドワインの輸入にとどまらず、インドネシア産のワインもあるのだ。いくつかワイナリーが存在する。お客にオーストラリア人を持つため、インドネシア産のワインをオーストラリで飲むことが少ない彼らにとって貴重なワインである。
グローバル化で問われる日本の対応力
変化する現地の空気を感じ、改めて思う。「日本大丈夫か?」と。
私が心配しなくても大丈夫だとは思うが、日本の停滞感漂う中、直近のお祭りごととしての東京五輪。これは停滞感を打ち破る出来事になる、なっているはずだ。
様々な国から、様々なバックグランドの人が訪れる。
改めて思う「言語の問題」。これは今に始まったことではないが、日本人英語喋れなさすぎ!なのだ。海外経験や普段多国籍の人に触れている人は特に感じていると思うが、やはりもう少し英語が話せる人が増えるとその分対応に満足して帰っていただける観光客も増える。
ここ最近、公共交通機関のガイダンスも言語対応(日英、プラス中国or韓国というところだろう)はやはりまだまだである。レストランメニューも日本語と英語対応ができているところは、10件中1件ほどの割合だろう。
次に施設の問題だ。
今年5月に増築されたスカルノハッタ空港(ジャカルタ)第3ターミナルを歩いていて目についた、トイレの次に多い「Praying Room」。お祈りをするお部屋が整っているのだ。行きに利用した成田空港のレストラン内に、「ハラールレストラン」をひとつ発見したが、日本で目にすることはまだまだ少ないのが現状だ。
これに纏わる話となるが、先日、クライアントのところへお邪魔した時にとても興味深い光景を目にした。大型車製造メーカーさんのグループ会社で中古車販売をしている会社。その会社さんは、全国にいくつかのオークション会場を持ち、オークションにより中古車を販売している。
ある地方会場へ伺ったとき目にしたのは、とてもインターナショナルな光景だった。
オークション会場に来ているバイヤーの6割が外国人なのだ。バングラディッシュ、パキスタン、タイ、インドなど中東の国の方が大半を占めている。中東では、日本車が大変人気があり日本で買い付け、輸出をしている会社が増えているそうだ。
日本人客より中東からのお客が多くなった同社は、しっかり彼らに対するサービスを行う。一つは前述したpraying roomの設置だ。
大きな敷地に駐車場があるのだが、その一角にプレハブ小屋が2つ置かれていた。その存在に少し違和感を感じ、「あれはなにか?」とお客さんにお尋ねしたところ、「お祈り部屋ですよ!」と。なるほど〜〜、クライアントがイスラム教徒なら、それは必要だ。一日かけて買い付けを行う彼らにとって、必要不可欠なスペースである。
その会場には、食堂がありメニューにはもちろん「ハラール」も用意されている。素晴らしい!
もともと国内の会社相手に商売をしていたが、年々増え続ける海外の会社に対して一緒に変化していた結果、今のサービスがあるとのこと。
真のおもてなしとは、「サービスを受ける側に合わせた対応を行い喜んでもらうこと」。
「日本のおもてなしはこれだ!」という勝手な押し付けではない。それはとても些細なことであるが、実現の難しさもある。一人ひとりに合わせなくてはいけないからだ。
ただ少なくとも言えることは、万人に合わせた対応すらできていないのが日本の対応レベルだと私たちは知った方がよい。それを知らずして、日本のおもてなし力を掲げるのには少々無理がある。ある種の人にとっては、現在の日本のおもてなしサービスは押し付けにすぎないのだ。遅れた日本の応対サービスは、時に日本人である私さえもいらいらしてしまうことがある。例えば、急いでいると伝えても「毎回馬鹿丁寧にお辞儀をして余計な時間を費やすウェイターさん」のように。
状況が変わる中で急激に我々日本も変わっていけるのだろうか?
間違いなく、変わる起爆剤となる(なってほしいと願う)のは東京五輪の開催だろう。
開催までの様々な準備はあくまで準備にすぎない。それだけでは、さほど変わることはないだろう。
ただ、五輪開催により様々な人を受け入れることを体験することで、いろんな発見があるはずだ。それをフィードバックし、東京ひいては日本の変革へ結びつけてほしい。
真のおもてなしはその先に実現できるかもしれない。