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【森友学園問題】忖度こそ民主主義の本質である。

忖度することは、そんなに悪いことなのか?

混迷を続ける「森友学園問題」。混迷を続ける原因は、自民党が昭恵夫人の証人喚問を拒否しているからではなく、そもそもが場外乱闘になるしかない筋の悪い話だからだ。そのことについては、ダイヤモンド・オンラインの連載「社会貢献でメシを食うNEXT」で詳しく書いた。
2017.3.21
森友学園問題はマーケティング視点で考えると「無理筋」だ

無理筋であることは野党も左翼マスコミも気がついていて、だから論点を当初の「安倍総理の政治的関与の問題」から「忖度(そんたく)」の問題に論点をずらしてきている。いくら追求しても安倍政権を追い詰めるだけの材料が出てきそうにないので、証拠が出せるはずもない、あるかないかも誰も証明できない「忖度」の問題にすり替えるしかないのだ。

というわけで、最近のニュースを見ていると、役人が政治家に忖度することが、もの凄く悪いことのように主張している。忖度することが政治的腐敗を生んでいるかのような論説ばかりだ。

しかし、実は忖度すること自体は悪いことではない。というか、むしろ役人が忖度しなくなった時のほうが危険だ。忖度は実は、民主主義の本質なのである。

このことは少し以前にも、橋下徹元大阪府知事がテレビ番組で語っていたが、テレビだと伝わりにくい話だと思うので、僕なりの視点で詳しく解説してみたい。

なお本稿では、森友学園問題とは全く関係なく、役人が忖度することの意味を論じている。森友学園問題が絡むと、左翼の皆さんはすぐに論点をぐちゃぐちゃにして、議論をふっかけてくるが、論点からズレたいちゃもんはつけてこないようにお願いします。

「良い忖度」と「悪い忖度」

さて、そもそも忖度とは日本独自の文化であることについて。

今回の森友学園問題でも、忖度がキーワードになっているが、海外メディアはこれを英語などの母国語でどうやって伝えようか、かなり苦労しているという。たとえば、英語には忖度をストレートに表現できる言葉がないようだ。言葉がないということは、その文化にそのような概念がないということで、やはり忖度というもの(行為?)は日本独特のものであるらしい。

そして日本は昔から忖度の国だった。それは民間企業でも同じだ。

企業人なら若い頃によく先輩から言われたと思う。

「言われる前にやれ!」「言われてからやるようではダメだ!」

つまり、会社の上司や取引先の意向をくみ取って、相手が何かを言う前に自発的に行う。これが忖度だ。

日本社会の息苦しさを象徴する言葉のようだが、そうでもない。

日本の高級旅館などでは、客の要望を先回りして察知して、リクエストする前にさっと差し出すのが優れたサービスだと考えられている。これも忖度だ。

民間企業も政治家や官僚に対して忖度する。

政府が「女性活躍推進だ!」と言えば、中央官庁や県庁などの地方行政はもちろん、民間企業でも女性管理職を増やそうと「忖度」する。産休、育休も取りやすくする。

「働き方改革だ!」と言えば、労基局は大手企業にバンバン査察に入り、ブラック上司を書類送検するし、大手企業は率先して残業禁止を打ち出す。

自民党だけに忖度しているわけではない。民主党政権の時代も「新しい公共」と言って、NPO業界はずいぶんと忖度してもらったはずだ。

つまり、安倍政権が特段に強権的なワケではなく、役所も民間企業も、みんな政治家に忖度する。それが日本社会なのである。

そして、それは民主主義の原則から言っても「正しい」のである。

「忖度」は民主主義の本質である。

役所や民間企業が政治家に忖度して、長時間労働を減らしたり、女性活躍推進したり、NPO活動を行いやすくすることは「良い忖度」で、森友学園に格安で国有地を払い下げるのは「悪い忖度」だと思うかもしれない。

しかし、忖度自体に良いも悪いもない。

そして、役人は政治家に忖度すべきなのである。

なぜか?

それが民主主義の本質だからだ。

そもそも役人とは公僕であって、国民や住民のために仕事をすることが第一義だ。自分たちの勝手な判断や価値観、目的意識で行政を行うべきではない。自分たちで判断して行動すると、たとえば戦前の関東軍が満州で暴走して、日本を泥沼の戦争に引きずり込んだみたいなことが起きる。

だから、役人は自分たちでは方向性を決めずに、国民や住民の意見に従って仕事することが求められる。

しかし、国民や住民と言ってもさまざまな意見がある。右を向いている人もいれば、左を向いている人もいる。とても全員一致した意見など成り立たない。そこで国民や住民の代表である議員を選び、議会で議論して国や県、市町村の行政の方向性を決める。それが民主主義の基本だ。

だから、役人は政治家が決めた方針に従って仕事をする。それが役人の行動原理であり、そうでなければ(勝手に自分たちで判断して決め手は)困るのだ。

だから、東京都知事が小池百合子氏になれば、都庁職員は小池知事の方を向いて仕事する。それは、小池都知事は都民が選んだ行政の長だからだ。総理は民主主義国家・日本の正式な手続きに則って就任した行政の長であるから、官僚たちが総理の方を向いて仕事するのは当たり前だし、そうでなくては大問題なのだ。

これは民間企業も同様だ。社長や役員会の方針に逆らって(無視して)どこかの事業本部長が勝手に自分の判断で事業を行えば、場合によっては、会社を経営危機の状態に陥らせることもある。また、部下が暴走したことで事件が起きれば、その会社のガバナンスが社会から厳しく問われる。

行政も同じだ。

だから、行政や大企業など、大きな組織で仕事をしている人間は、トップに忖度することは正しいことであり、そうでなくてはならない。

忖度した結果が、不正や犯罪につながっているとしたら、それは忖度の結果が間違っていたという話であり、忖度がどうあったかの問題で、忖度があったかどうかの話ではない。忖度はあるし、あって当然だし、そうあるべきなのだ。

なので、今回の森友学園問題に関しても、忖度があったとかなかったとか議論しても無駄。

そんなことよりも、なぜ、払い下げられた国有地の値段が(値引きが)本当に不正だったのかどうか、大阪府の認可審査の過程が本当に適正だったかどうか、本筋を調査し議論すべきだと思う。

それを本気でやらずに、忖度などという誰も証明できない(つまり罪にも問えない)問題にばかり拘泥するようでは、野党は本音の所ではこの件は筋が悪いと気がついていて引っ込みがつかなくなっているか、民主主義の原理原則がわかっていないのか、どちらにしてもみっともない話だと思う。当面の間、政権交代は難しいだろう。

 

 

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竹井善昭

CSRコンサルタント、マーケティング・コンサルタント、メディア・プロデューサー。一般社団法人日本女子力推進事業団(ガール・パワー)プロデューサー。

ダイヤモンド・オンラインにて「社会貢献でメシを食うNEXT」連載中。
http://diamond.jp/category/s-social_consumer
◇著書◇「社会貢献でメシを食う」「ジャパニーズ・スピリッツの開国力」(共にダイヤモンド社)。 ◇翻訳書◇「最高の自分が見つかる授業」(Dr.ジョン・ディマティーニ著、フォレスト出版刊)

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