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オヤジたちよ。大手町女子を解放せよ!

大手町女子はなぜ地味なのか?

大手町あたりに行くといつも不思議に思うことがある。大手町女子はなぜ、あんなに地味なファッションをしているのか?ってことだ。

大手町といえば、言わずと知れた日本経済の中心地。三井、三菱系のメガ・バンク、商社をはじめ日本を代表する大企業が集積している。経団連ビルもある。そこで働く人たちの給料も高い。そこで働く女子のみなさんも、慶應や上智、青学、立教などオシャレ大学出身者も多いはずだ。にも関わらず、なぜに大手町女子は揃いも揃ってあんなに地味なのか? 高い給料をもらっているのだから、もっとオシャレすればいいのにと不思議に思っていた。

そんな疑問をとある大手町女子に話をしたら「地味にしてないと上司に叱られるから」という。「私でも派手だと、いつも上司に文句言われている」と言うその女子の出で立ちは、僕の感覚からすれば派手でもなんでもない。20代女子としては、普通。青学あたりならそれがスタンダードと思える程度のオシャレ度だが、大手町では完全にアウトだという。

だから、学生時代はオシャレだったハイスペック女子のみなさんも、大手町勤務を続けるうちに、どんどん地味な女になってしまうということらしい。

なるほど。大手町女子が地味な理由は分かった。と同時に、日本経済が衰退に向かっている裏の理由もよくわかった。日本のジェンダー・ギャップ指数が世界最低レベルなのも、日本経済が沈下し続けているのも、女子に対して「オシャレ禁止!」を押しつけているオヤジ上司のせいなのだ。

この問題は、女性活躍推進という意味でも問題だが、日本経済全体にとってはもっと大きな問題だ。

最近はアベノミクスでいざなぎ景気を超えたと言われる。株価も25年ぶりの高値をつけた。港区女子なるバブリーな女子も増殖しているらしいし、正社員の有効求人倍率も1.0を超え、非正規起用の時給も上がっている。失われた20年をようやく脱したかと思ってる人も多いかもしれない。だが、僕は悲観的だ。

長期的にみれば、日本経済が成長すると思わせる要素は実はあまりない。たとえばEVも自動運転もAIもドローンも、これからの成長が確実視されている分野で日本がリードしている分野はほとんどない。来たるべき未来に勝てそうなものがほとんどない。そして、現在は絶好調の企業や分野も、これからどうなるかはまったく分からない。トヨタだってEVの時代が到来したらどうなるか分からないのだ。長期的にみて、日本経済が成長できそうな感覚がまったく感じられないのだ。

「女子文化」の価値が分からないオヤジ上司たち

日本経済が成長しそうにないと感じる、その最大の理由は、企業人に自分たちの価値が見えていないところにある。自分たちの強みが分かってないとも言える。だから、勝てるはずのないところに資源を投下したりして大やけどをおったりしている。典型的な例が液晶テレビで、韓国や中国に勝てるはずもないのにそこで勝負して日本の家電業界は壊滅寸前にまで追い込まれた。にもかかわらず、あいかわらず4Kとか言って、あいかわらず大型テレビの分野で勝負しようとしている。ホントに懲りないのだが、これと同じようなことを、いろんな業種、企業が行っている。そして、勝負できる分野、自分たちの強みに対してリソースを投下できていない。

たとえば再生医療ビジネス。再生医療は日本が最先端を走るものであるし、官民挙げてこの分野に取り組んでいると思うかもしれないがそうではない。あのノーベル賞を受賞した山中教授でさえ、マラソンを走って寄付集めをしているくらいだが、問題なのは視野の狭さだ。

再生医療はたしかに医療分野で大きな成長が期待できるし、だから製薬会社も医療器機メーカーもこの分野に注力しているが、実は再生医療がもたらすものは「新しい医療ビジネス」だけではない。再生医療とはアンチ・エイジングでもあるので、革命的な美容ビジネスを生み出せる可能性を秘めているのだ。

たとえば、お肌が完全に再生できるとすれば、どんなに年を取っても赤ちゃん肌を維持できるのだ。シミができても簡単除去できるようになるだろう。おっぱいの張りも維持できるようになるはずだ。女性にとってはまさに夢の技術。

なにしろ、世界の女性の数は35億だ。しかも、その大多数は未だに社会進出できていない。途上国はもちろんだが、欧米日本の経済先進国でさえジェンダー平等は実現していない。ということは、逆に言えばこの女性市場はこれから爆発的に成長するということだ。

その巨大化する女性市場において、日本が誇る再生医療の技術は、とてつもないビジネスを生み出す可能性があるのだが、残念ながら日本のオヤジどもはその可能性にピンときていないようだ。

政府もクール・ジャパンとか言ってアニメやゲームに投資しているが、ハッキリ言ってアニメもゲームも、家電業界における液晶テレビみたいなモノで、今後は韓国、中国には勝てなくなる。

しかし、たとえば美容整形でも日本の技術のほうが優れているし信頼できるということで整形大国・韓国に対して日本は競争力を持っている。韓国に整形旅行する中国人女性も多いが、富裕層女性は韓国よりも日本だ。化粧品も資生堂など日本製が中国でも人気だ。

クール・ジャパンも、再生医療絡みで日本の美容技術や美容コンテンツに投資すべきなのだが、どうもそのような気配が感じられない。それは結局、クール・ジャパンを仕切ってるのも(たぶん)オヤジだたちで、アニメやゲームなどの男の子文化は理解できても美容、つまり女子文化は理解できないから、その可能性、成長性も見えないのだろう。

技術立国とかモノづくり大国とか言うけれど、肝心なことはどのような技術で何を作るかであって、勝てる技術で売れる商品を作らなければ意味がない。日本の包丁は欧米人もビックリするくらい素晴らしいとか言っても、包丁製造産業で1億の民が食っているはずもない。包丁職人は大いにリスペクトすべきだが、職人のロマンに感情移入していても、日本経済は成長しない。

オシャレ禁止を強いるオヤジ上司に日本企業は潰される

というわけで、日本は再生医療という「勝てる技術」で美容という「売れる商品」を作るべきなのだが、もちろん成長の可能性がある女性市場分野は美容関連だけではない。

前回の記事で書いたように、女性の社会進出が進めば、男性が独占的だった市場にどんどん女性が入り込んでくる。

男客だけを対象としてた焼き鳥屋や牛丼屋、もつ鍋屋、マッサージ店などが女性客を獲得して大きく成長したように、女性客を取り込んで成長できる分野はまだまだ数多い。女性向けのビジネス・ホテル需要も増えるだろう。

アパ・ホテルがアメリカに進出。独自の成功ノウハウを活かして、世界で勝負しようとしているが、同様の勝負を女性向けビジネス・ホテルというコンセプトでも展開できるはずだ。タクシーや民泊も、女子に安心な新しいプラットフォームが作れたらUberやAirbnbに勝てるかもしれない。

女性市場はまだまだ無限だし、大きな成長性がある。

しかし、女性の部下に「オシャレ禁止!」「地味にしてろ」と強要するオヤジ上司は、ようするに女性らしいことが嫌いなのであって、だから女性市場のことは分からない。というか、分かりたいと思っていない。

つまり、女性社員が地味にしている企業は、結局のところ女性のことが分からないし、理解しようとも考えていない。女性市場に積極的でもない。

しかし、成長する巨大市場に背を向けて生き残れる企業はない。

インターネットが世の中に出てきた時に、多くの大企業役員オヤジは生理的にこれを受け付けなかった。それで日本はIT化の波に乗り遅れて「失われた20年」を迎えるハメになった。そして多くの企業が潰れた。

長銀が破綻し、シャープが身売りし、東芝も危機的な状況だ。大企業だってどうなるか誰も分からない。大手町企業といえども安泰ではない。

そして、古い世代が自分たちの価値観に固執している企業は、必ず衰退する。女性の部下のファッションに、自分の価値観を押しつけるようなオヤジ上司が、女性の時代に対応して、斬新な戦略を打ち出せるはずもない。

日本経済成長のためにオヤジ世代がやるべきは、まず自分たちの古い価値観を捨て去ることだ。

そして、大手町女子のファッションを解放すべきなのである。

 

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竹井善昭

CSRコンサルタント、マーケティング・コンサルタント、メディア・プロデューサー。一般社団法人日本女子力推進事業団(ガール・パワー)プロデューサー。

ダイヤモンド・オンラインにて「社会貢献でメシを食うNEXT」連載中。
http://diamond.jp/category/s-social_consumer
◇著書◇「社会貢献でメシを食う」「ジャパニーズ・スピリッツの開国力」(共にダイヤモンド社)。 ◇翻訳書◇「最高の自分が見つかる授業」(Dr.ジョン・ディマティーニ著、フォレスト出版刊)

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