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稲田朋美に小池百合子。女性に防衛大臣は無理ゲーなのか?

東京都議選の応援演説で「防衛省・自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と発言して大問題となっている稲田朋美防衛大臣。即刻辞任すべき、というか安倍総理は即刻罷免すべきレベルの大問題発言だが、どうも安倍総理と女性の防衛大臣は相性がよくない。

第一次安倍内閣の時は防衛庁・防衛相の歴史の中で初の女性大臣として小池百合子氏を起用したが、次官人事を巡り防衛相、官邸、自民党を巻き込む大騒動を引き起こし、たった55日で事実上の辞任。そして、今回の稲田大臣の大失言である。どうしてこのようなことになってしまうのか?

女性に防衛大臣は無理なのか?

稲田大臣に対しては野党のみならず、自民党からも、民族派のひとたちからも「解任しろ!」コールが巻き起こっており、普通に考えれば辞任を余儀なくされる状況だ。官邸がいまだに彼女を庇う理由がさっぱり分からないが、もし辞任・解任となれば、小池百合子氏に続き、女性防衛相が二人も続けて辞任・解任に追い込まれることになる。ちなみに、歴代の女性防衛大臣は二人しかいないので、たった二人とはいえ「女性防衛相はすべて」辞任・解任に追い込まれるという事態に陥ってしまう。

そうなるともう「女に膨大大臣は無理」と考える人が増えてしまってもしょうがない。これはゆゆしき問題ではあるが、もともと防衛大臣は男性がやるものというイメージも強いと思われるので、そのような社会的バイアスがますます強まってしまう。

しかし、はたして本当に女性には防衛大臣は無理なのだろうか?

個人的には、無理とはいわないが、膨大大臣の素養・資質を持った女性はかなり少ないと思う。

これは防衛大臣に限らないが、大臣となる人物にはやはりそれなりの素養、資質、知見が必要だ。当選回数だけで順繰りにポストに就けるというものであってはならい。

防衛大臣は国防を仕事とするわけだが、国防とは軍事なので、多少なりとも軍事的なセンスが必要だ。軍事的なセンスとは、細かいところは分からなくても、戦略的な思考ができることと、戦略を実行するためにはなにが必要かがイメージできるということだ。

ハッキリ言って日本人はこのような軍事的なセンスがまったくない。最近はあまり言われなくなったが、少し前までは政府が自衛隊を少しでも増強しようとか予算を増やしたりしたら「侵略国家に戻る気か!」とマスコミや野党が騒いでいた。

空母の一隻も持たず、大規模な揚陸部隊も持たない自衛隊が、イージス艦を新しく建造しただけで、どうやって侵略国家になれるのか、まったくナンセンスな話ではあるが、そのような言説が現実にまかり通るのが日本という国だ。

国民やマスコミがその程度のレベルなのに加えて、軍事に興味を持つ女性は少ないので、軍事的なセンスのある女性はかなり少数派だ。

また、軍事とは地政学でもあるが、地図を読むことが好きな女性も少数派だ。

よく「女性は地図が読めない」と言われるが、これは必ずしも正しくはない。特に理系女子の中には地図を読めるどころか、初めて訪れた町を歩きながら自分の頭の中に地図を描き、町の全体像を把握してしまう女性もいる。そこまででなくても、観光地では地図を片手に散策している女性もよく見かける。

しかし、地図が読めることと、地図が好きということは異なる。たとえ地図が読めても、地図が好きという女子はあまりいない。

しかし、軍事は地政学なので、なにかある毎に日本周辺の地図を自然と見てしまうとか、見ないと気が済まない人でなければ軍事的センスは養えない。そして、軍事的センスがなければ、軍事的な戦略思考もできない。

そんなわけで、防衛大臣としてふさわしい女性はかなり少数派だと思う。

「女性だから」で起用することの危険性

もっとも、たとえ少数派でも、能力とセンスがあれば女性でも防衛大臣として起用することはありだと思う。しかし、もともとが少数派なのだから、その中から女性を防衛大臣として起用することはけっこうハードルが高い。

僕は基本的には、女性に下駄を履かせることは賛成だ。企業でも女性管理職、女性役員を増やすにはどんどん下駄を履かせればいいと思っている。

しかし、それも程度ものだ。

たとえば防衛大臣としての能力が100%でなくても、70%くらいはあるとか、センスはあるというなら女性には下駄を履かせてみた方がいいと思う。企業でも部下を背伸びさせることで人材育成することは昔からある。

しかし、稲田議員に関しては能力もセンスも皆無。なんで安倍総理はこんな人物を防衛大臣に任命したのだろうと疑問に思う。

その本当の理由に関しては知るよしもないが、もし「女性だから」というだけの理由で起用したのであれば、これは大きな間違いだ。どうしてもマッチョなイメージを醸してしまう自衛隊という軍隊のトップに女性を据えることで、少しでもソフトなイメージを作りたかったとして、それで女性を防衛大臣に起用したとしたらそれは間違いだ。

「女性に下駄を履かせること」と「女性だから起用すること」がどう違うのだと思うかもしれないが、つまりは下駄を履かせるにしても、女性なら誰でもいいワケではないということだ。

「女性なら誰でもいい」で誰かを要職に起用することは、女性活躍推進をむしろ阻害する。資質のない女性を据えても稲田大臣のようになれば「だから女はダメだ」という空気感を作ってしまうからだ。安倍総理は、稲田氏を防衛大臣に起用することで、女性活躍推進という自ら掲げた重要政策の推進を邪魔している。今回の問題発言の責任を取らせることなく、辞任もさせず、解任もしないことでさらに自分の掲げた政策を裏切っている。

残念ながら、今の女性政治家の中で防衛大臣にふさわしいと思えるような女性はいない。ブッシュ政権下で国家安全保障問題担当大統領補佐官および国務長官を歴任したコンドリーザ・ライスのような女性が日本にも登場したら、ぜひ一度、防衛大臣をやって欲しいと思っているが、そんな女性が登場するまでは、防衛大臣は男でいいと思う。

 

 

 

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竹井善昭

CSRコンサルタント、マーケティング・コンサルタント、メディア・プロデューサー。一般社団法人日本女子力推進事業団(ガール・パワー)プロデューサー。

ダイヤモンド・オンラインにて「社会貢献でメシを食うNEXT」連載中。
http://diamond.jp/category/s-social_consumer
◇著書◇「社会貢献でメシを食う」「ジャパニーズ・スピリッツの開国力」(共にダイヤモンド社)。 ◇翻訳書◇「最高の自分が見つかる授業」(Dr.ジョン・ディマティーニ著、フォレスト出版刊)

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