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日本の「女子文化」が世界の女性を変えつつある?

成熟から若さへとシフトするパリの文化

基本的に欧米は「Mature(成熟)」が良しとされる文化で、パリなどでは「顔のしわは女の勲章よ」とまで言われるほど。成熟することが、人としての正しい年取り方であると考えられてきた。

しかし、最近のパリのシニアは様変わりしているようだ。

そんな興味深い記事が「東洋経済オンライン」に掲載された。

「パリの男女がハマる「50代思春期」の衝撃実態 男友達を娘とシェア…まさに”幸年期”」という記事だ。

こちらの記事によると、パリでは「Quincados(カンカド)」という言葉が3年ほど前から流行っているという。

これは、「外見も内面もまるで30代、時にティーン・エイジャーのように振る舞う50代の男女のこと」だそうで、

ヴィンテージものやダメージもののジーンズ、コンバースのスニーカーとTシャツ。子ども世代に受けている映画を見る、身体を若者のように鍛える、週に1回は明け方までフェット(パーティ)して、マウンテンバイクが大好き。若者世代と友人となり、話すことと言えば“若造り”。そんな感じの人たちです。

ということだ。

外見を実年齢より若く見せる、いわゆる「アンチ・エイジング」はここ10年くらい、世界的なブーム、というかムーブメントになっている。日本でも、2009年に雑誌『美STORY』が“7人の美魔女会議”というブログをスタートさせ、翌2010年には『国民的美魔女コンテスト』が開催されているし、『TIME』などの世界の一流誌もアンチ・エイジングの特集を組んだりしている。

ただ、このアンチ・エイジングは基本的に外見的な「若さ」を追求することで、文化的にはやはり成熟が良しとされる文化が根付いていると思っていた。

その「成熟した大人の文化」の牙城がパリであるというイメージがあったのだが、そのパリの50代男女の意識が変わったということで、これは大きな文化的変動だと思う。

なにしろ、彼ら、彼女たちは、

本気で若いと思い込んでいますので、精神年齢が同程度の(20〜30歳も年下の)友人や恋人を持ち、ニューテクノロジーに夢中で、SNSやコミケに熱中しています。

ということで、つまり、この「カンカド」という人種は「永遠のティーンエイジャー」なのである。

世界の女性はどんどん「女子化」する?

この現象は、すなわちパリの女性が「女子化」しているということだ。

「女子とはなにか?」については定まった定義はないが、僕は「永遠の女子大生」であると考えている。

大学を卒業して社会人になっても、結婚しても、子どもが出来てママになっても、子どもが成人しても、いつまでも女子大生のような外見と内面を持つ女性。それが女子だ。

「最近のお母さんは、まるで女子大生みたいだ」と言われ始めたのは、バブル真っ盛りの80年代後半だが、その後も、このバブル世代の女性たちは、40代になっても、50代になっても、女子大生のようなファッションやライフ・スタイルを楽しみ、永遠の若さを謳歌するような人生を送ってきたし、その後の世代の女性にも大きな影響を与え、かくして日本の女性は「女子化」した。

最近は、FacebookやInstagramにも、「女子大生の娘との2ショット写真」をアップしている母親世代の女性も多いが、まるで姉妹のように見えてしまう。下手すると、娘よりお母さんほうが美人だったりする。

日本の女性はホントに若くてキレイになったと思うが、文化的にも若い。感性が若いのだ。

娘と洋服を共用するなど当たり前。カラオケでは同じ曲を歌うし、食事するレストラン選びのテイストも同じだ。

文化的な若さという点では男性(パパ)も同様で、休日にまるで20代の若者のようなファッションで街を歩いているシニア男性も増えたし、夏になればロック・フェスに参戦するオヤジも増えた。

最近の親子は仲が良いと言われるが、それは文化的に親子の差がなくなった、親子で文化を共有できるようになったからだと思う。

昔はそうではなかった。

僕が小学生の頃に聴いていた音楽はザ・タイガースなどのグループ・サウンドで、中学生くらいからはロックを聴いていたが、親の世代は美空ひばりとか北島三郎を聴いていた。

それが今では親子で浜田省吾やサザンオールスターズのコンサートに来たり、韓流イベントなど母、娘、孫娘の三代で来たりしている。

ちなみに(自慢ではないが)、僕も数年前にEDMの世界的なムーブメントを娘に教えている。

そんなわけで、日本ではほぼ完全に、シニア世代の文化と若者文化がシンクロしていると言って過言ではない。

ただ、このトレンドは「幼さ」を愛でる日本独特の文化的背景があってのこと。欧米ではなかなか通用しないし、理解もされないのかと思っていたが、前述の記事を読むとそうでもないようだ。

この文化的な「若者志向」が世界的なムーブメントだとすれば、日本の女子文化が世界の女性に大きな影響を与える可能性も考えられる。

「KAWAII」がすでに英語として定着しつつあるが、「JOSHI」もまた英語として世界に通用する日が来るかもしれない。しかも、そう遠くない未来に。

文化は重要な輸出産業であると同時に、インバウンド(海外からの観光客誘致)の重要な要素だ。つまり、国力の源泉でもある。

日本の未来はやはり、ニッポンの「女子」が担っているのかもしれない。

 

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竹井善昭

CSRコンサルタント、マーケティング・コンサルタント、メディア・プロデューサー。一般社団法人日本女子力推進事業団(ガール・パワー)プロデューサー。

ダイヤモンド・オンラインにて「社会貢献でメシを食うNEXT」連載中。
http://diamond.jp/category/s-social_consumer
◇著書◇「社会貢献でメシを食う」「ジャパニーズ・スピリッツの開国力」(共にダイヤモンド社)。 ◇翻訳書◇「最高の自分が見つかる授業」(Dr.ジョン・ディマティーニ著、フォレスト出版刊)

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