ほんの少しのコストとアイデアが世界の女性を救う
世界には想像を絶する過酷な状況に置かれたままの女性たちが数多く、理解し難い差別的、抑圧的な因習、文化もまだまだ残っている。そのような実情を知ることも、女性をエンパワーするためには必要だが、僕たちが本当に知りたいことは、問題そのものではなく、その問題をどうすれば解決できるか? ということだ。
絶望を希望に変えるにはどうすればいいのか?
たとえ少しずつでも、生活を変え、仕事を作り、女性の立ち位置を変える。その積み重ねの上に、女性が自由に生きることができる社会が築かれるのだと思う。
今年の「国際ガールズ・デー」に合わせるようにリリースされた書籍「WOMEN EMPOWERMENT 100 〜世界の女性をエンパワーする100の方法」(ベッツィ・トイチュ著 松本裕訳 英治出版刊)は、そのタイトルどおり、生活、文化、仕事など人が生きるさまざまな側面から、女性をエンパワーする方法(しかも、100ドル以下という安価で!)について、数多くのアイデアが紹介されている本だ。
この本を読むと、「こんな方法で途上国の女性の生活が改善するんだ!」とか「こんなビジネスのやり方があるんだ!」という、さまざまな「インサイト」に刺激されるが、同時に途上国が抱える見えにくいリアルというものが理解できて勉強になる。
たとえば、本書で紹介されているペットボトルライト。
これは、ペットボトルに水を入れて、家の屋根に穴を空けて差し込んでおくと、陽の光がペットボトルの中で乱反射して、家の中を明るく照らすというもの。55ワット電球に相当する光量を部屋に提供する。
安価で簡単な方法で実現できる「ライト」だが、日本で暮らしている人たちは、いまいちピンとこないと思う。このライトは電力や光を蓄積するわけではないので、日が出ている日中にしか機能を発揮しない。夜間には役に立たないこんなライトに何の意味があるのかと思うだろう。
しかし、途上国のスラムなどの家屋には窓がないことも多く、日中でも室内が暗い。そのような環境では、日中にしか光をもたらさないこのペットボトルライトも大きな意味を持つのだ。暗い部屋に光がもたらされることで、家事や子どもたちの勉強にどれほど役に立つことか。
このような、ささいだが、しかし女性たちの生活や生き方に大きな影響を与える「リアル」は、社会問題を考える上で重要なポイントだが、この「WOMEN EMPOWERMENT 100」は、そのようなリアルに溢れた書籍である。しかも、それらの問題ひとつひとつに解決法が提示された、(社会問題や女性問題解決の)リアリティを感じることができる本でもある。
画期的なアイデアに学ぶことが、ビジネス・スキルを磨く最良の方法
同書はその他に、歯磨き、栄養強化のノウハウから「女性器切除の慣習を、違う儀式で置き換える」方法など、女性の健康、保険に関するアイデア、エネルギー、仕事、環境など多岐にわたるさまざまな分野での「解決法」について紹介されている。
そのアイデア、解決法はほぼ途上国の女性に取って役に立つものだが、日本で暮らす僕たちにとってもインスパイアされることが多い。「こんな考え方があるのか!」「このアイデアは応用できる!」と思わせるインサイトに溢れている。
その意味では、日本の社会問題に取り組むNPOや社会起業家だけでなく、一般のビジネス・パーソンにとっても有益な本だと思う。ビジネスの本質とは、新しい価値を生み出すことにあるが、そのためのスキル、アイデア力、企画力を磨くためには、優れたアイデアを学ぶことが最も効果的な学習だからだ。
「WOMEN EMPOWERMENT 100 〜世界の女性をエンパワーする100の方法」(ベッツィ・トイチュ著 松本裕訳 英治出版刊)
全国書店にて発売中。
同署はAmazonからも購入できます。
また、同書を含む、女性問題、少女の問題が理解できる書籍を集めた「世界の女の子のために、私たちにできること」フェア」も各地の書店で開催中です。これを機会にぜひ、世界の少女が置かれた問題を知り、その解決の方法、アイデアを知ってください。
フェアの開催書店は下記の通り。開催機関は各書店によって異なります。詳しくは英治出版のサイトをご覧ください。
フェアの開催書店
【東京都】HMV&BOOKS TOKYO、慶應義塾生協三田書籍部、首都大学東京生協南大沢購買書籍部、中央大学生協多摩店、ジュンク堂書店吉祥寺店
【神奈川県】紀伊國屋書店横浜店、紀伊國屋書店横浜みなとみらい店、明治学院生協横浜購買書籍部、明治学院大学横浜校舎図書館、慶應義塾生協日吉書籍部
【富山県】文苑堂書店福田本店
【石川県】金沢大学生協角間購買・書籍、金沢大学付属中央図書館
【大阪府】MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店、紀伊國屋書店梅田本店、紀伊國屋書店本町店
【兵庫県】甲南女子大学生協書籍・購買部