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ナイジェリア代表を救った高須院長の話を「美談」にできない理由

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竹井善昭

プロデューサーGirl Power
ガールパワー・プロデューサー 株式会社ソーシャルプランニング代表取締役 マーケティング・コンサルタント メディア・プロデューサー

リオ五輪サッカーのナイジェリア・チームを救った高須院長の寄附

給料や滞在費の未払い問題で、リオ五輪のサッカー準々決勝の試合をボイコットするかも? という騒動にまで発展したナイジェリア・チーム。

高須クリニックの高須院長が20万ドルをチームに寄附すると表明したことで問題は収束。ナイジェリア・チームは準々決勝に出場、デンマークに勝利して4強に進むこととなった。

ボイコット問題と高須院長の寄附のニュースはこちら

準々決勝のニュースはこちら

ネットでは、この高須院長の侠気ある行為を大絶賛! SNSでも美談として、多くの人が投稿したりつぶやいたりしている。

たしかに、この話。単体としてみれば「美談」だ。

もちろん、高須院長の行為を批判するつもりはない。

ただし、これを途上国支援の文脈で考えれば、「美談」としてもてはやすことにはやはり問題がある。

善意の支援が「腐敗」も支援してしまう。

なぜなら、高須院長が寄附をしたところで、問題の根本的な解決にはなってないからだ。

今回のナイジェリア・チームの問題の本質は、アフリカの国々に蔓延する腐敗の問題である。

政府の高官が、国の富や海外からの援助を私物化する。

民間人も、海外NGOからの支援物資を横領する。

このような腐敗は世界中であるが、特にアフリカでは酷いという。少なくとも僕は、複数の国際NGOの人間から異口同音にそのような話を聞いている。

アジアの途上国では素晴らしい成果を出しているNGOも、アフリカでは横領などの腐敗のせいでうまくいかず、撤退してしまったNGOも知っている。

このような、腐敗の構造と文化を変えなければ、根本的な解決にはならない。

今回の高須院長の行為も、短期的にはナイジェリア・チームを救ったことになる。

このニュースが世界に配信されることで、また同様の問題がナイジェリア・チームを襲った時、きっと世界のどこかの慈善家が高須院長のように寄附を行い、チームを救うのだろう。

そして、ナイジェリアのスポーツ界の腐敗もまた温存される結果となる。

善意が腐敗を温存させるのだ。

アフリカは、第二次世界大戦以後、世界銀行や先進国政府が何十年にもわたって数兆円もの援助を行ってきた。

「we are the Wolrd」の大ヒットで有名になった「USA for Africa」はバンドエイドなど、欧米のロックスターたちによる民間のチャリティも数多く行われてきた。

それでもアフリカの問題は解決しない。

では、どうすればいいのか?

ザンビア出身で、ハーバードで修士号、オックスフォードで博士号を取得し、ゴールドマン・サックスで8年間勤務した女性エコノミストのダンビサ・モヨは指摘する。

「アフリカの国々を発展させるのは簡単だ。明日から援助をやめればよい」

つまり、アフリカの国、そして人々には自立する力があるのに、その力を先進国からの援助が殺いでいるという主張だ。

初めての著書「援助じゃアフリカは発展しない」(東洋経済新報社刊)での、モヨの主張は賛否両論の激しい議論を巻き起こした。

しかし、モヨの主張に説得力をもたせてくれるような映画が最近、日本でも公開された。

「ポバティー・インク〜あなたの寄付の不都合な真実〜」(以下、ポバティー・インク)だ、

人の善意が途上国の社会を壊し、人々の尊厳を奪う。

この映画は、途上国に対する善意の支援が、いかに途上国の社会を破壊し、人々を傷つけているか、そのことを描いたドキュメンタリー作品だ。

ハーバード、スタンフォード、MITなど、世界の大学80以上のキャンパスでも上映されている。

たとえば、2010年のハイチ大地震の時、世界中から数多くのNGOが入り込み、多大な支援を行った。

そのこと自体は良いことだった。

しかし、震災から巣年経ってもまだNGOはハイチに残り、支援を続けている。

その数、約1万ともいわれ、いまやハイチは人口あたりのNGOの数は世界一だという。

そのために、どのようなことがハイチで起こっているか?

たとえば、ハイチではある若者がソーラーシステムの街灯を作る会社を作った、

ハイチは電力に不足しているが、太陽光は豊富だ。

最初は社会も理解知れくれず苦労したが、だんだんと理解されるようになり、発注量も増え、多くの従業員を雇えるようになってきた。その従業員のほとんどはスラム街で暮らす貧困層だ。

つまり、このソーラー街灯のビジネスは、環境ビジネスでもあり、社会問題を解決するソーシャル・ビジネスでもあった。

しかし、ビジネスが軌道に乗り始めた頃、大地震が襲った。

そして、世界中からNGOがやってきて、おなじようなソーラー街灯のシステムを「無料で」配り始めた。

無料に勝てる商品はない。

月に50本ほどの受注があった彼らのビジネスも、NGOが入り込んでからは、半年に5本程度にまで激減したという。

「トムズ・シューズ」のことも描かれている。

トムズは、自分用の靴を一足買ったら途上国の子どもたちにも靴が一足プレゼントされるという仕組みで人気の靴の製造販売会社だ。

これも、ちょっと見には素晴らしい仕組みで、事実、トムズはソーシャル・ビジネスに関するさまざまな賞を受賞している。

しかし、途上国にだって靴を作っている人たちがいる。

そのようなところに、トムズが無料の靴を大量にばらまいたらどうなるか?

映画ではそのことも丹念に描かれている。

このように、支援や善意というのは非常にやっかいなものなのだ。

この映画「ポバティー・インク」は、その他にもU2のボノなどのセレブによる支援の問題点など、さまざまな「善意の問題点」が描かれている。

渋谷アップリンクで公開中。9月上旬までの予定とのこと。

また、名古屋、大阪、神戸でも順次、公開予定(時期未定)

今回の高須院長の行為を「素晴らしい!」と絶賛している人たちは、ぜひこの映画を見て、善意がそう簡単なことでも、単純なことでもないということを理解して欲しい。

映画の詳細は公式サイトから

 

 

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竹井善昭

CSRコンサルタント、マーケティング・コンサルタント、メディア・プロデューサー。一般社団法人日本女子力推進事業団(ガール・パワー)プロデューサー。

ダイヤモンド・オンラインにて「社会貢献でメシを食うNEXT」連載中。
http://diamond.jp/category/s-social_consumer
◇著書◇「社会貢献でメシを食う」「ジャパニーズ・スピリッツの開国力」(共にダイヤモンド社)。 ◇翻訳書◇「最高の自分が見つかる授業」(Dr.ジョン・ディマティーニ著、フォレスト出版刊)

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