特攻隊員たちはいったい何を護ろうとしたのだろう?
今日は終戦の日ーー
例年、僕はこの日の正午の時を、靖国神社で迎える。
多くの参拝者の方々と黙祷しながら想うことはさまざまだが、特に強く想うことはやはり特攻隊員たちのことだ。
彼らはどのような思いを胸に、敵艦に突撃していったのか?
たとえば鹿児島県の知覧の基地を飛び立った97式戦闘機が、沖縄沖に展開する米艦隊に到着するまで約2時間。
その2時間を、彼らは何を思い、何を考えながら飛んでいったのか?
彼らの、その時の胸中に思いをはせることは、今の日本に生きる僕たちの大切な役目だと想う。
世の中には、特攻隊員や日本という国をおとしめるために「彼らは命令されて突撃しただけ」だと言う人もいる。
しかし、特別攻撃に参加して戦死した若者は、陸軍、海軍合わせて約6千名もいる。
これだけ多くの若者が、ただ命令されただけという理由で、自らの命を投げ出すような行動ができるものなのか。僕には疑問だ。やはり、特攻隊員の若者たちには、強い使命感と深い思いがあったとしか想えない。
ことわっておくが、僕は特攻は作戦としてはやはり邪道だと思っている。
戦略としても、まったく合理性に欠けるもので、戦略性の欠片もない。
しかし、戦略性や作戦としての評価と、特攻隊員たちへの評価はまったく別だ。
彼らの精神と行動はやはり崇高なものだった。
そして、美しかった。
しかし、なぜ美しかったのか?
それはけっして、日本人特有の「滅びの美学」ではない。
特攻隊員たちはなぜ美しかったのか?
特攻隊員たちは何を護ろうとして、自らの命を差し出したのか?
もちろん、それは日本という国であり、故郷であり、大切な家族だが、特攻隊員たちの遺書を読めば、それは単なる家族や故郷や国に対する思いだけではないことが感じられる。
特攻隊員たちは、たとえば、生まれて間もない、顔を見ることも叶わなかった娘に対する思いや、残された妻への思い。父母や兄弟に対する感謝の言葉が綴られている。
その文章がまた美しい。
二十歳前後の、作家でもなんでもない一般国民の若者たちが、このような美しい文章を綴っている。それができたのもの、やはり彼らの精神の崇高さと美しさ故である。
その美しさとはなにか?
彼らがほんとうに伝えたかったこと、護りたかったこととはなにか?
それは、日本という国の歴史だ。
この国の歴史を護るために
かつて、将来の総理候補として目されながら疑獄事件に巻き込まれ、身の潔白を主張して自殺した新井将敬という政治家がいた。
生きていれば、間違いなく今の日本の、強力なリーダーになったはずの人物で、まことに残念ではあるが、その新井将敬が「政治はどこへ行く!日本の理念は何処へ」と題する講演で次のようなことを述べている。
評論家の中にも、たとえば、憲法九条という日本の絶対的平和主義というものを原理とし、この原理のために日本という国が存在しているという憲法学者は幾らでもいるんです。この議論をつきつめて行くと、国防もしない絶対的平和主義、とにかくこれは、議論をつきつめて行くと、かつての土井たか子の言っていたような完全非武装で、どこかの国が攻めて来たら逃げればいい、という議論にしかならないのです。
絶対的平和主義を進めて行くと、人間は逃げたら命は助かるかもしれない。国を守らないで逆に死ぬのも皆さんの勝手かもしれない。それでは、この国を今まで造って来た人達の歴史はどこに消えて行くのですか、あるいは、これからの国を愛して住んで行こうとしている人達に何を残すのですか。
特攻隊員たちが護ろうとしたものは、ここで新井将敬が言う「この国の歴史」だったのだと思う。
情報統制されていた当時の日本でも、多くの人はもう日本は負けると感じていたはずだ。そのような状況の中で、軍隊にいても、いや軍隊にいるからこそ、日本の劣勢を多くの兵士は感じていたと思う。
ましてや特攻隊員たちは、敵艦隊が沖縄まで迫ってきていること。特攻などという「邪道」な手段でしか方策がなくなっていることを知らされていた人たちだ。
自分一人が敵艦に体当たりし、それで空母や戦艦を沈めたとしても、戦況に大きな変化が生まれないこともわかっていたと思う。
しかし、それでもなお、命をなげうち、爆弾を抱えて出撃していった。
それは、たとえ日本が戦争に負けても、日本という国の歴史が護ることができれば、いつか日本は不死鳥のようによみがえる。そのことを信じて出撃し、そのことを幼い子どもたち、遺された妻、戦後に生まれてくる多くの日本人(僕らのことだ)に伝えたかったのではないか。
歴史というものは、「過去」「現在」「未来」のパースペクティブの中にある。
特攻隊員たちが、沖縄沖までの2時間、その胸にわき上がっていたことは、このパースペクティブの中での「歴史」だと思う。
だからこそ、未来を託された僕らは、特攻隊員たちの精神に思いをはせるべきなのだ。
それは、僕らもまた、「これからの国を愛して住んで行こうとしている人達に何を残すのですか」ということを問われているからだ。
だから僕は、終戦の日には靖国神社に行き、特攻隊員のことを考える。
みなさんにもぜひ、そのことを考えて欲しい。
話題の感動作! 特攻隊部隊『未来へつむぐ』大阪公演
特攻隊のことを考えるために、関西の方にはぜひご覧いただきたい公演がある。
「未来へつむぐ」~今をありがとう~
現代の女子大生が70年前の知覧飛行場にタイムスリップする。そこで、特攻隊員たちとのふれあいの中で感じ、考えたこととは何か? 彼女が、現代の社会に持ち帰ろうとしたものはなにか?
そんなことを描いた作品だ。
女性視点から特攻隊をどう捉えているか?
その点でも、読者の女性にはぜひご覧いただきたい作品だ。
8月27日土曜日と28日日曜日、大阪のテイジン・ホールでの公演。
関西方面の方は、これを機会にぜひご覧いただきたい。
【公演概要】
後世へ平和の約束 「未来へつむぐ」~今をありがとう~ 大阪公演 日程:
《公演概要》
◆日時:2016年8月27・28日(土・日)
27日 12:30開場 13時開演
27日 16:30開場 17時開演
28日 11時開場 11:30開演
28日 15時開場 15:30開演
◆チケット情報
●前売:4,500円 当日:5,000円
●学 生(大学生以下):3,000円 (当日学生証提示)
●中学生以下:2,500円 (当日学生証提示)
●80歳以上:無料(事前申込)
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