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男はなぜセクハラするのか、男の視点で考えてみた

 

世界規模で巻き起こるセクハラ糾弾のムーブメント

セクハラ糾弾のムーブメントが世界中で拡大している。ご存知のように、ことの発端は昨年、ハリウッド女優のアシュレイ・ジャッドが、大物プロデューサーだったハーベイ・ワインスタインのセクハラを告発。その内容がニューヨーク・タイムズで掲載されると、他の女優たちも次々と告発。ワインスタインは映画界を追放されることになったが、ことは映画界を超えて飛び火。メディア会でも記者やテレビ司会者のセクハラが糾弾され、CBSのチャーリー・ローズや、NBCのマット・ラウアーなど大物キャスターが次々と解雇・辞任。皮肉なことに、ムーブメントの震源地であるニューヨーク・タイムズでも、ホワイトハウス担当記者のグレン・スラッシュもセクハラで停職処分。他の業界でも、ウーバーのCEO(当時)トラビス・カラニックがセクハラなどの不祥事の責任をとって辞任。体操界では、米代表チームのスポーツドクターだったラリー・ナッソーが、未成年を含む7人の女性に対するセクハラで訴追。性的暴行罪で禁固175年の実刑判決が出た。

もちろん、ことはアメリカだけで収まらず、イギリスではファロン国防相が女性記者へのセクハラを認めて辞任。ノルウェーでは女性100人が地元紙のセクハラを告発。フランスでは大統領選に出馬したラサールら複数の政治家を、元秘書たちが告発。抗議デモも起こっている。スウェーデンでは、ノーベル文学賞を選考するスウェーデン・アカデミーに関係する文化界重鎮男性たちのセクハラ疑惑も起きている。

もちろん、セクハラ問題は欧米だけの問題ではない。途上国はもっと酷い。というか、途上国ではセクハラというより、もっとストレートにレイプの問題が大きいのだが、それはまた別の機会に論じるとして、当たり前だが日本でもセクハラ問題はある。

男はどうしてセクハラをするのか? それは「男がスケベだから」だと言ってしまえればそれまでだが、しかし、そうは言っても、セクハラする男性もいればそうでない男性もいる。そして、セクハラが起きやすい(蔓延している)業界とそうでない業界もあると思う。その違いはなにか?

今回はそのことを、男目線で考えてみたいと思う。

セクハラ問題の根源にある「女の敵は女」問題

セクハラというものは、誰かが己の権力を笠に着て性的嫌がらせをすることで、権力や財力(財力もまた権力のひとつだ)のない人間は、セクハラしたくてもセクハラは成立しない。結局のところ、芸能界やメディア界、あるいは医者の世界など、セクハラやレイプ事件が頻発する世界は「女性がすり寄ってくる世界」なのだ。

少し前に医学生や東大生によるレイプ事件が頻発した時期にも書いたが、

途上国でレイプ事件が横行するのは、「女はレイプしてもいいもの」という考えてを持った男性が多いからだ。

それと同様に、セクハラする男性は、どこかで「女性はセクハラしてもいい」と思っている。それは、実際にすり寄ってくる女性、もっとハッキリといえば、枕を仕掛けてくる女性がいるからだ。

男は権力を持つと、枕を仕掛けられることが増える。僕も、かつて人気のテレビ番組をやっていた時は実際にいろいろあった。女の子から誘われることもあるし、女の子を紹介するとすり寄ってくる男もいる。

知人の紹介で知り合った女の子に誘われて食事したら、「番組で使ってくれたら、好きにして良いですよ(セックスしますよ)」とハッキリ言われたこともあるし、知人男性に紹介したい女性がいるというので会ってみて、ホテルのカフェでいろいろ話をした後で席を立とうとすると、その女子から「私はどうすればいいのですか?」と聞かれたこともある。「この後、ホテルの部屋に行かなくてもいいのですか?」という意味だ。

パーティーに誘われて行ってみたらモデルみたいな女の子が大勢いる。そんな女の子たちに、最初はあまり相手にされなかった僕も、「あの番組のプロデューサー」として紹介されると、女の子たちの態度が露骨に変わったことも経験している。

芸能事務所のマネジャーと話をしていて、事務所所属の女性タレントのファンだと言うと、すぐに食事のセッティングをしてくれる。

そういうことが度重なれば、よほど気をつけていなければ勘違いする男性も出てくるだろう。

ちなみに、僕が関わっていたその番組「ASAYAN」はオーディション番組で、数多くの歌手やアイドルを生み出していた。なので、全国各地から数多くの女の子たちがオーディションを受けに殺到していた。なので、スタッフが問題を起こさないように、オーディション応募者の女の子とスタッフが二人っきりで会うことは、たとえお茶でも厳禁。もし発覚したらスタッフは即刻クビというルールだが、それくらい厳格にやらなければ、男は勘違いするものなのだ。

というわけで、ASAYANではとにかく問題が起きないように、厳格にクリーンを保っていたが、他のレコード会社などのオーディションでは緩いところもあったようで、世の中にはミスコン荒らしならむオーディション荒らしみたいな女の子もいて、そのような子は音楽プロデューサーの間でも有名になっていて「あの子はフェラチオがうまいよね」とか、プロデューサーどうして笑い合っていた。なんともゲスな話ではあるが、そういう女の子もいるから風紀も乱れ、セクハラも起きる。

医学生が女の子を飲ませて集団でレイプする事件を起こすのも同様のメカニズムだろう。以前、女医が20人ほど出演して医療界のあれこれを暴露するという番組があったが、その中で語られていたのは、とにかく男性の医者はモテるということ。

出演したある女医によれば「医者であれば、ハゲでもチビでもデブでもなんでも、とにかくモテる」という。それほどモテるなら、勘違いするゲス野郎が出てきてもおかしくない。

このように、文字どおり身を挺して男の権力、財力、社会的地位にすり寄ってくる女性がいるから、勘違い男性も生まれてくる。まっとうに頑張っている女性には良い迷惑で、まさに女の敵は女である。

男のセクハラやレイプを守る組織の論理

セクハラする男性の心理にはもうひとつ、セクハラやレイプをしても、自分は糾弾されない、会社や業界など組織が守ってくれるという認識がある。実際、今回のアシュレイ・ジャッドの件では、ワインスタインが追放されたが、これもアシュレイに続き、数多くの女優たちの告発があったこと、メディアが大きく取り上げたことによるが、今までなら、女優の告発も黙殺され、むしろ告発した女優が映画界から干されることもあったと思う。

アメリカの大学では、いわゆるキャンパス・レイプが大きな問題だが、レイプ事件を起こすのは、大学スポーツのスター選手が多いという。それで、スター選手にレイプされた女子学生が大学に告発しても、大学はスターをかばって事件をもみ消したりする。大学がもみ消してくれれば、スター選手は罪悪感など感じるわけもなく、自分は女性をレイプしてもいい特別な人間だと勘違いする。

参考記事

枕を仕掛ける女性が絶えないのも、レイプ野郎を組織が庇うのも、結局は男社会の悪しきメカニズムだと言ってしまえばそれまでだが、セクハラを無くすためには、やはり女性が男性に対して「勘違いするなよ!」と訴求するしかない。セクハラする男性は、セクハラしても自分は許されると考えているわけだが、「そんなわきゃないじゃん!」ってことをハッキリとメッセージすることが大事だ。

その意味では、世界的なムーブメントになっている#metooも、いまいち日本では盛り上がってないことは気になる。セクハラ被害を告発することは、もはや恥でもなんでもない。もっと声をあげなければ、セクハラ野郎は図に乗り続けるし、セクハラ問題はなくならない。

また、日本でもセクハラ問題への関心が高まり、組織が対応を迫られれば、枕営業を仕掛ける女性も減るだろう。セクハラを組織が守ってくれず、むしろすぐに辞職に追い込むようになれば、男とすればセクハラに留意するようになる。それは、枕営業を易々と受け入れることが大きなリスクにもなるので、受け付けない男性も増えるだろう。というか、そういう男性しか残れない。そうなれば、枕営業も無駄になるので仕掛ける女性も減り、勘違い野郎も減るというわけだ。

そのためにも、日本でもセクハラに厳罰化が求められる。政府や労基局も、働き方改革で残業を減らすのも良いのだが、もっとセクハラ問題に注力すべきだと思う。労基局三田署あたりが、港区の大企業のセクハラ事件を告発してくれれば大きなニュースにもなるだろう。

多くの働き女子にとって大きな課題は、残業よりもむしろセクハラ問題なのだから。

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竹井善昭

CSRコンサルタント、マーケティング・コンサルタント、メディア・プロデューサー。一般社団法人日本女子力推進事業団(ガール・パワー)プロデューサー。

ダイヤモンド・オンラインにて「社会貢献でメシを食うNEXT」連載中。
http://diamond.jp/category/s-social_consumer
◇著書◇「社会貢献でメシを食う」「ジャパニーズ・スピリッツの開国力」(共にダイヤモンド社)。 ◇翻訳書◇「最高の自分が見つかる授業」(Dr.ジョン・ディマティーニ著、フォレスト出版刊)

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