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難民少女がラップで夢を叶える映画「ソニータ」

夢を追いかけるなら、たやすく泣いちゃダメさ

「ソニータ」という映画がこの秋、日本でも公開されている。イラン在住のアフガニスタン難民少女ソニータがラッパーになる夢を追いかけるドキュメンタリー映画だが、日本に住む僕らはこの映画にどう向き合えばいいのか、難しい。

そもそも僕ら日本人は、イラクで暮らすアフガニスタン難民の少女が、どのような立ち位置で生きているのかを想像することが難しい。ましてや、そんな少女がラッパーになるという夢を追いかける事の困難さを理解することは、さらに難しい。

しかし、それでもなお、この「ソニータ」という映画を紹介したいと思うのは、たとえ背景となる状況を知らなくても、何かの夢を追いかけている人なら、きっと共感できるし、勇気と力を与えてもらえると思うからだ。

どこの国で暮らしていても、難民の生活は過酷だ。アフガニスタンのタリバンからイランに逃れてきたソンータはパスポートも滞在許可証も持たない不法移民である。難民センターで清掃員として働きながらかろうじて生きている。姉と姉と姪と三人で暮らしているが、家賃が払えずに家を追い出されそうになる。

そんなソニータの夢は有名なラッパーになること。男友達とユニットを組み、音源を作ろうとする。しかし、イランでは女性が歌うことは禁止されている。そんな国で、少女がラップをやることなど論外だ。音楽スタジオも、音源制作に協力したことがバレると、スタジオを閉鎖されてしまうと制作を拒否されてしまう。それでもめげずに、スタジオを回り、ようやく協力してくれるスタジオを見つけるが、費用は1万ドルだと言われる。不法移民のソニータにはとてつもない金額だが、男友達が働いてなんとか工面しようと頑張る。

しかし、そんなソニータの元に、アフガニスタンの両親から結婚の話が舞い込む。結婚といっても、実際には花嫁として売られる話だ。アフガニスタンでは夫側から早嫁の家族に支度金が支払われる。その相場は9000ドル。両親はソニータを結婚させ、そこで得た支度金で長男を結婚させるつもりなのだ。つまり、兄が花嫁を「買う」ために、ソニータは売られようとする。

まだ14歳。そしてラッパーになるという夢を抱いたソニータは、この結婚を拒否するが、両親は強引に結婚を迫る。ここでソニータを密着して映画を撮影してきた監督が母親に商談を持ちかけてしまう。2000ドル払うから時間的猶予をくれという交渉だ。これはドキュメンタリーとしては完全に掟破りで、カメラマンも「ダメですよ。監督」と止めに入るが、監督はお金を払ってしまう。この時点でこの映画はドキュメンタリーではなく、リアリティTVのようなものになってしまうのだが、だからといって映画の本質が損なわれるわけではない。この映画は、何が起きているかを記録した映画では無く、ソニータが夢を追う過程を記録するものだからだ。

そして、時間的猶予を得たソニータはスタジオに入り、音源を制作する。そこからソニータの運命は激変する。どのように変化するかは、ネタバレになるので書かないが、ソニータは自らの意思の力で、夢を実現し自由を手に入れる。

すべての夢を追いかけている人たちに観て欲しい

さて、僕ら日本人はこのソニータの物語にどう向き合えばいいのだろう? もちろん、性差別と闘い自由を手に入れた一人の少女の物語として向き合うことも可能だ。日本で生きている女性たちは、花嫁として売られることもないし、歌やダンスも自由だ。しかし、それでも女性としての生きづらさや抑圧を感じている人には、勇気を力を与えてくれるだろう。

もちろん、そのような向き合い方も有益だ。しかし、僕はもう少し表現というものに、自分を表現するということに、日本の女性たちが向き合うきっかけになって欲しいと思う。

途上国の女性たちに比べれば、日本の女性は自由だし、女性としての権利も守られている。しかし、日本には日本特有の課題もある。それは同調圧力だ。空気を読んで、誰かに忖度して、SNSでの批判を恐れて、思ったことを口にできない。特に女性は、女子コミュニティの中で、上にも下にも突出せず、平均点の範囲で目立たず、しかし無視もされずに生きていこうとする。しかし、そんな状況に息苦しさを感じている女性も多いはずだ。

強力な同調圧力の中で、下を向いて言いたいことも言えない日本の女性たちに、ソニータが突きつけるのは「上を向け。胸を張れ。思ったことくらい口にしろ」というメッセージだ。

今の日本社会では、思ったことを口にするだけでバッシングを受けるリスクはある。しかし、それでもなお、表現したいことがある。そんな衝動を抱え、表現することが大事なのではないか。自由に生きるとは、単に差別や制約の無い社会に生きることを意味するのではない。他人にどうしても伝えたい何かがあり、そのことを伝えること、口にすること。それが、本当の意味で自由に生きるということだと、ソニータはメッセージしていると思う。そのメッセージを受け取るためにも、僕ら日本に生きる女性は、この映画を見るべきだし、ソニータと向き合うべきなのだ。

この「ソニータ」は、サンダンス映画祭2016にて「ワールドシネマ部門 グランプリ」、シェフィールドドキュメンタリー映画祭2016にて「ヤング審査員賞」「ワールドシネマ部門  観客賞」、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭 (IDFA)2015にて「観客賞」受賞など、世界各地の映画祭で数多くの賞を受賞している。

日本では2017年10月21日(土)よりアップリンク渋谷他にてロードショー!この映画、ガールパワーも後援しているので、ぜひご覧ください。なにかの夢を追いかけている人には特にご覧いただきたい映画です。

映画「ソニータ」公式サイトはこちら

 

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竹井善昭

CSRコンサルタント、マーケティング・コンサルタント、メディア・プロデューサー。一般社団法人日本女子力推進事業団(ガール・パワー)プロデューサー。

ダイヤモンド・オンラインにて「社会貢献でメシを食うNEXT」連載中。
http://diamond.jp/category/s-social_consumer
◇著書◇「社会貢献でメシを食う」「ジャパニーズ・スピリッツの開国力」(共にダイヤモンド社)。 ◇翻訳書◇「最高の自分が見つかる授業」(Dr.ジョン・ディマティーニ著、フォレスト出版刊)

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