◎男性ホルモンは変動がないからこそリスクがある
勝 男性の場合はホルモン分泌はどのようになっていますか。女性とは違いますよね。
対馬 男性はホルモンの変動がないので、常に体調は一定しています。でも、そのためにストレスがかかり疲れが溜まっていても症状として現れない。現れる時には大きな病気として出てきます。心筋梗塞などで死亡する場合もありますし、鬱状態から自殺してしまうなど、生命のリスクが大きくなります。
勝 ふだん体調が一定しているから良いと思いがちですが、症状が現れるときには生命のリスクが大きいというのは怖いことですね。
◎女性は男性を守ってあげられる存在
対馬 そんな男性を守ってあげられるのも、女性です。感情や体調が揺さぶられるのは女性ホルモンが自分たちの命を守っていること。そんなホルモンの動きを大事にして、丁寧なケアをしていくことは、自分が快適になるだけではなく、男性も守ってあげられる環境をつくることができる、ということなのです。女性の第六感なんていいますが、ホルモンが低下し、何かしらの身体の条件が悪化すると女性ホルモンが脳に不安を与える、それは、生命の危機を脳が判断する力なんです。女性はその能力が長けているということになります。その力は、社会を守ることにも貢献するのではないでしょうか。
勝 私は、ほてりや些細なことが気にかかりイライラしたり、気持ちが不安定になることが続き、これって更年期なのだろうかと思いながら、サプリメントや漢方薬を使っていました。ある時、漢方薬を処方していただいている婦人科のドクターから「ホルモン補充療法のパッチを試してみますか」と勧められたんです。そして週に2回張り替えるタイプのパッチを使いはじめたら、今までの不調がすっと消えて驚きました。足の関節の痛みまでなくなってしまい、様々な不調の原因は更年期だったのかと、実感しています。
対馬 更年期の症状の対策には色々なものがありますが、かかりつけの婦人科ドクターを持ち、ご自分にあった対処をすることで、かなり改善します。我慢しないでくださいね、と言いたいです。日本女性は我慢しすぎなの。
◎女性ホルモンを作れなくなると更年期障害症状となる
勝 なぜ女性だけ「更年期障害」といわれる症状がでてくるのでしょうか。
対馬 思春期から成熟期にかけて一気に増えた女性ホルモンが、45歳あたりから急激に減り始めるためです。卵巣に寿命が訪れたということですね。生まれたときに約200万個あった卵胞は、40代で1万個以下に減り、50代ではほぼゼロになります。卵巣内の卵が1000個を切ると月経がなくなると言われています。月経のない状態が一年間続いたら「閉経」です。女性の平均閉経年齢は50歳で、閉経を挟んで前後10年間が更年期です。45歳くらいから55歳くらいまでですね。卵巣の寿命が近づくと、女性ホルモンを作ることができないため分泌量が急激に減るわけです。
勝 女性ホルモンが急激に減ると、、。
対馬 女性ホルモンで守られていた身体はパニックをおこします。脳は必死に女性ホルモンを出そうと指令をがんばってだすけど、ホルモンは作られない。だから自律神経が暴走してしまいます。体温の調節がうまくいかない、皮膚はカサカサし、動悸がしたり、めまいを覚えたり、気分はふさぎ、不眠や関節の痛み、疲れやすくなります。
勝 まさに!私はまったくその通りの症状でした。
対馬 60代くらいになると女性ホルモンが分泌されない状態にも体が慣れてくるのですが、閉経前後はかなり揺らいでしまうわけです。女性ホルモンが作られなくなると、ホルモンを作るために使われていたコレステロールが使われなくなるので、コレステロール値が上がってきます。45歳以上の女性は自分のコレステロール値の変化をチェックするとわかりやすいですよね。値が高くなってきたら、女性ホルモンが減ってきたということです。女性ホルモンによって守られていた、皮膚、粘膜、関節、筋肉、胃腸、血管、脳機能、自律神経、免疫系などが弱くなります。排卵や月経回数が多いことで増えている子宮内膜症は、更年期以降は心筋梗塞につながる恐れがあります。
対馬ルリ子医師
◎更年期は乗り越えなくても大丈夫
勝 ネガティブな事が増えてしまいますね。多くの女性たちが悩んでいると思います、更年期をどう乗り越えればよいのでしょう。
対馬 少し立ち止まって、自分の身体に向き合う時期と捉えるのがよいでしょう。乗り越えようと頑張らなくてよいのです。確かに不調は色々とありますが、きちんと検診をして、自分の身体を知る絶好の機会です。体質によっては、無理をすると、産後の不調と同じ症状がでてくることがあるので、用心しましょう。無理はきかない時期ですから、休みをしっかりとり、辛い症状がある時は、決して我慢しないで婦人科に気軽に相談してください。きっとふさわしい治療法が見つかります。
治療法には様々なものがありますが、やはりホルモン補充療法(HRT)がメインになります。不足しているエストロゲンを補充するので、脳も安定し全身の調整ができるようになります。ホットフラッシュが収まり、胃腸の不調や肌の乾燥、関節痛も改善、気持ちも明るくなります。更年期のマイナスの症状の多くが改善され、動脈硬化や骨粗しょう症、認知症の予防にも役立つなど多くのメリットがあります。60歳以降から始めても効果はありますが、50代から始めた方が、より大きな改善と予防効果がみこめます。婦人科の主治医を持つことで、ご自身に合った快適な道を探せますので、安心してください。
勝 恵子Girl Power専務理事
◎現代の女性は、月経の回数が10倍も増えている
勝 50代になる前にこのようなことをきちんと知っておきたかったと思います。
対馬 戦前は50歳という年齢は閉経し、寿命が尽きる頃でした。昔の女性には「閉経後の人生」がなかったのです。女性の身体の仕組みは全く変わらないのに、現代女性のライフスタイルはすっかり変わりました。初経が早く、20代後半で結婚、出産は30代から40歳くらいで出産数は1人か2人。1人しか産まなかったら、妊娠期と授乳期の無月経期間は短く、子宮や卵巣が休める時期は約2年です。昔の女性は5人、10人と多産でしたので、生涯の月経と排卵回数は約50回。今の女性は10倍増え、約500回もの排卵月経があるといわれています。
勝 昔の女性は、生涯に50回しか月経を経験しなかったということに驚きです。かくゆう私も高齢出産、子どもは1人だけです。
対馬 もちろん、出産は命のリスクがあることですが、今は多くの排卵と月経を繰り返すことによって子宮に負担を与えています。そのため今の女性は、子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣膿腫、卵巣癌など、婦人科疾患が増えています。身体のサイクルは変わらないのに、ライフスタイルが変わったためにストレスがかかっています。月経や排卵のリズムとは関係なく、ハードな仕事をし、家事も育児もして、様々なストレスと長年戦う女性に、もっと女性ホルモンのリズムを理解してほしいと思います。
男性や周りの社会も理解することで、ストレスを減らすことができます。女性が幸せになれば、社会は輝きます。昔は更年期後の人生はありませんでしたが、閉経後の長い人生の健康寿命を延ばすことはこれからの女性の課題。そのためにも女性ホルモンの知識を広めるべきなのです。
勝 私たちガールパワーが目指すところも同じです。
対馬先生、ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
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