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電車で化粧はみっともない?東急電鉄広告炎上事件を考える。

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竹井善昭

プロデューサーGirl Power
ガールパワー・プロデューサー 株式会社ソーシャルプランニング代表取締役 マーケティング・コンサルタント メディア・プロデューサー

批判集中?東急電鉄の「電車で化粧はみっともない」広告

「電車で女性が化粧をすることはみっともない」と訴えた東急電鉄のマナー広告が議論を呼んでいる。「批判殺到!」というネット記事もある。

はたして、女性が電車の中で化粧をすることがみっともないことなのかどうか? 個人的には、これは程度モノだと思っている。リップを軽く塗る(塗り直す)程度なら不快感も感じないが、たまに必死になってマスカラを塗っている女性など見かけるが、これなどはやはり「みっともない」と感じる。ただ、これはあくまで個人的な感覚であって、本稿ではもう少し客観的な考察を行いたい。

まず、この広告に対する批判が殺到とか、論議を呼んでいるとさまざまなニュースが伝えているが、ほんとうに批判や論議を呼んでいるのだろうか?

この件に関しては、メディアも緊急アンケートを行っている。

たとえば、日本テレビ系情報番組『スッキリ!!』が番組内で視聴者を対象にアンケートを実施。回答者の87%(3万838人)が「みっともないと思う」、13%(4754人)が「思わない」と回答している。

マイナビのこちらの記事によれば、20代〜30代女子の81%が「電車の中での化粧はなし」と回答。「あり」は19%にとどまった。

電車の中で化粧しているのは若い女性というイメージがあるが、世間一般のおよそ9割、20代、30代の若い女性でも8割が「なし」と考えているということだ。

つまり、世の中の圧倒的多数が、電車の中での化粧を「なし」と考えている。それなのに、電車内メイクを「迷惑だからやめましょう」と訴えた広告が批判されるのはなぜか?

バイアスがかかりやすいネット上の批判意見

実は、ここにサイレント・マジョリティとノイジー・マイナリティの問題が露呈している。

基本的にネットでの意見は「否定派」がメジャーになりやすい。正確に言えば、炎上事件のほうがニュースや話題になりやすい。ネットでいくら多くの共感を得ても、SNSでどれだけ多くの「いいね!」がついても、ネットで話題になることも、ニュース・メディアが取り上げることはほとんどない(例外はある)。しかし炎上事件はすぐにニュースになる。それが、大企業や有名人をめぐる炎上事件ならなおさらだ。

そして、炎上事件のニュースはある種の燃料投下なので、炎上はさらに拡がっていく。

基本的にネットにはこのようなメカニズムがあるので、ネットで批判が集まっているからと言って、それが世間一般の意見であるかどうかは冷静に判断する必要がある。今回のように、ネットでは批判が高まっているかのように見える(そう報道されている)が、実際には大多数の人間はそうは感じていないケースも多いのだ。

もちろん、実際に批判している人間が多数で、だから炎上事件になっているケースもある。

つまり、今の時代には、ネットでの批判や炎上事件が、実際にはどうなのかを冷静に見極めるリテラシーが必要だということだ。

特に企業やメディア、そして行政の人間は、そのあたりを読み取るリテラシーがなければ、マーケティング的にもコミュニケーション戦略的にも、大きな失敗を犯すリスクがある。

昔からネットでは、4〜5人の仲間がいれば、炎上事件など簡単に演出できると言われている。そのような事情を理解しておかなければ、企業やメディア、行政の人間は対応を間違える危険性が生じるということだ。

東急電鉄のマナー広告は正しい。

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今回の東急電鉄の広告に関して言えば、圧倒的多数の人間が「なし」と考えているわけなので、マナー広告としてはむしろ正しいメッセージだったと言える。「電車は公共のものなのに、化粧のことをあれこれ言われたくない」という意見もあるが、公共のものだからこそ、大多数の意見や感覚に従うのは正しいのだ。

もちろん、なんでもかんでもマジョリティの意見に従うべきだというわけでもない。たとえば、LGBTなどマイナリティの人たちの人権は、まさにマイナリティのものだが、マイナリティの人権を守ることは社会的正義であるので、仮に大多数の人たちがマイナリティの人権を認めていなかったとしても、その権利を守るべきだというメッセージはありだ。

しかし、女性が電車の中で化粧をすることに、なにかの社会的正義があるとは思えない(ゴリゴリのフェミ団体でも、そこに社会正義があるとは主張していない)。まあ、女性たちが結束して、電車の中で化粧をする権利を主張すれば、世の中の空気も変わるかもしれないが、今のところそのようなムーブメントも起きそうにない。結局のところ、電車内メイクの話は、人権の話でも社会的正義の話でもなく、マナーの話なのだ。そして、マナーとは文化の問題であり、多くの人々の気分の問題、感覚の問題なのだ。

たとえば、電車の中でオヤジが鼻毛を抜いていたり、鼻の穴の掃除をしていたり(つまり、鼻くそをほじっていたり)していたら、多くの人はそれをみっともないとか、特に若い女子は不快に思うだろう。電車で化粧をすることで、誰に迷惑をかけているの?という意見もあるが、同様にオヤジが鼻毛を抜いていたり、鼻くそをほじっていても誰に迷惑をかけるものでもない。しかし、みっともない。

東急電鉄が「電車で鼻くそをほじるな!」というマナー広告をやらないのは、実際にはそのような男性はほとんどいなくて、だから女性も不快に思うケースがほぼ皆無だからだろう。電車の中で鼻毛を抜くオヤジが目に余るくらいに増えることがあれば、それを「みっともない」とするポスターが貼られるようになるのだろうが、今のところ、そのような心配はない。電車の中で化粧をするなというポスターが貼られるとうことは、それを不快に思う人がそれだけ多いということだ。これは理屈ではない。マナーとは、他人が不快に思うかどうかの問題なのだ。

つまり、マナーの問題に客観的な論理性はない。日本では電車の中で携帯電話で会話することはマナー違反だが、海外ではOKだ。みんな、平気で電話している。日本では電車内携帯通話がダメで、海外ではOKなことに論理的な理由は何もない。ただ、多くの住民がどう感じているかだけの話である。

もちろん、マナーは時代によっても変わる。昔の日本では、電車の中でも多くの大人はタバコを吸っていたし、座席に灰皿もあった。駅構内には痰壺もおいてあって、つまり多くのオヤジは駅構内で平気で痰を吐いていたのだ。道端でも平気で吐いていた。昔はそれはみっともないことではなくて、今の時代にそれはとてもみっともないことで、だから公共の場で痰を吐くオヤジもいなくなった。

将来、電車の中で大多数の女性が化粧をするようになれば、電車内メイクもマナー違反ではなくなるのだろうが、少なくても現在の時点では大多数が「なし」と考えている。だから、マナー違反だとされることはしょうがないのである。

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竹井善昭

CSRコンサルタント、マーケティング・コンサルタント、メディア・プロデューサー。一般社団法人日本女子力推進事業団(ガール・パワー)プロデューサー。

ダイヤモンド・オンラインにて「社会貢献でメシを食うNEXT」連載中。
http://diamond.jp/category/s-social_consumer
◇著書◇「社会貢献でメシを食う」「ジャパニーズ・スピリッツの開国力」(共にダイヤモンド社)。 ◇翻訳書◇「最高の自分が見つかる授業」(Dr.ジョン・ディマティーニ著、フォレスト出版刊)

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