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女性が生み出す「7分間の奇跡」。世界に誇る新幹線劇場」。

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平賀 富一

平賀 富一

主席研究員アジア部長ニッセイ基礎研究所
ニッセイ基礎研究所主席研究員アジア部長/新潟大学大学院教授 企業のアジア戦略担当、外務省の対アジアODA担当、シンクタンクのアジア諸国等の政治経済分析担当、アジア等国(ソブリン)・企業等の格付け担当の経験を踏まえて、アジアを含むグローバルな企業経営・アジア経済、サービス業の国際化、グローバル人材の育成、アジア保険市場の動向などに関心を持って研究しています。また新潟大学大学院で教授、上智大学(総合グローバル学部・経済学部)と東洋大学(経営学部)で非常勤講師として、国際経営論や国際ビジネス等の講義を担当しています。最近は、アジアの企業経営や経済、グローバル人材の育成などをテーマに、中堅・中小企業の方々や海外の研究者・官僚等を対象としたセミナーでお話しする機会が増えています。

7分間の軌跡」として世界に知られる「新幹線劇場」

-世界に誇る新幹線のクリーン・快適な定時運行を支える「テッセイ」をリードするガールパワー

私は、今春から、新潟大学大学院の教授を兼務することになり、東京-新潟間を上越新幹線で頻繁に往復しています。新幹線の利用に慣れるに従って、揃いのユニフォームに身を包んで、礼儀正しく、きびきびと車内の清掃作業をこなす集団-多くが女性メンバー-に注目するようになりました。それが、今や、米CNNなどを含む内外の多くの報道・著作で知られ、米ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の企業事例の教材(ケース)にもなり、インターネット上のツイッターでも大きな反響がある、テッセイ(株式会社JR東日本テクノハートTESSEI、旧称は鉄道整備株式会社)のメンバーであることを知りました。

(テッセイとその業務等の詳細については、矢部輝夫氏(テッセイ元専務取締役)による「奇跡の職場」(あさ出版)や早稲田大学の遠藤功教授の「新幹線お掃除の天使たち」(同)、日経ビジネス(平成11年3月7日号)、HBSのケース「Trouble at Tessei」などをご参照ください)。

%e5%86%99%e7%9c%9f%e2%91%a2ここで、テッセイの概要に触れますと、同社は、JR東日本グループの企業で、主に東北新幹線・上越新幹線の清掃業務や構内業務などを担当しています(従業員数900名弱)。新幹線が駅に発着し、折り返し発車するまでの停車時間は平均12分であり、その短時間の中で乗客が乗降する5分間を除いて、1チームの基本構成員22名が、わずか7分間で各回の車両清掃を担当しています。同社による一日の車両清掃の総数(平均)は、列車約170本、座席数約17.3万席に及びます(同社ホームページ)。さらに新幹線が入線する際や清掃を終えた際の一礼等、礼儀正しく非常に効率的な動きは印象的であり、「7分間の奇跡」や「新幹線劇場」として賞賛されています。

以下には、筆者が感じているいくつかのポイントについて述べたいと思います。

なぜ、世界に誇る奇跡が生み出せるのか?

1.新幹線というエコシステムの価値創造を担う重要な構成メンバー

新幹線は、わが国が世界に誇る鉄道であり、その素晴らしさや高評価は、車両のみならず保守やオペレーションなどを含むシステム全体の強みであり、関係する各社(者)が、スピード・安全性・快適性を高水準で追求する「エコシステム」(関連する企業群が有機的に結びつき共存共栄する仕組み)にあると考えます。その中でテッセイは迅速で丁寧な清掃作業、礼儀正しい身のこなしなどを通じ、定時発着や乗客の快適・満足を担い、新幹線というシステムの価値創造に貢献する重要なメンバーです。

2.女子力の活用等ダイバーシティ化の時代、環境重視の時代を先導する職場
わが国では、様々な場でダイバーシティの推進の必要が主張されていますが、テッセイは、女性、高齢者が生き生きと働き、さらに外国人も加わるなどまさに多様な個性が活躍する職場といえます。実際、リーダーの多くがシニア層の女性です(同社によればマネジャー層の約4割が女性となっている由)。さらに環境問題への対応も経営理念の重要点に掲げ取り組んでいます。これらの点は、国や産業の別を超えて重要なポイントであり、内外のマスコミやHBSが積極的に取り上げている大きな理由として理解できます。

さらに、「おもてなし」というサービス産業の代表事例として挙げられることが多い、シンガポール航空、リッツ・カールトン(ホテル)、ディズニーランドなどは著名企業であり特別な存在との感もありますが、テッセイは、いわば「普通の企業」の「普通の人々」が高い志や誇りをもって素晴らしいサービスを提供しているという点で、内外の多くの企業や組織にとってより身近な参考事例になると考えられます。

3.メンバーにプロとしての意識・意欲を引き出し高める仕掛け作り
一般には、清掃作業を中心とする企業で、特に現場のメンバーにやる気をもって仕事に取組んでもらうことは容易なことではないと思われ、事実、HBSのケースの冒頭に提示されるように、テッセイもかつては多くの問題・課題を抱えていました。その状況の大変革にあたり、作業環境の整備、ユニフォームの改善、正社員への登用制度の充実などに加え、メンバーによる課題認識や論議を深め、提案・提言・チェレンジを促し、それらに出来る限り応えようと努めるなどの様々な取り組みが行われています。

それは、生活基盤の安定化から始まり集団(社会)への帰属やその中での尊敬・評価、自己実現という人のモチベーションの高まりを促す仕組みとなっています。また、現場を支えるメンバーやそのチームの活性化と成果を実現する上での、テッセイの経営陣や職場のリーダーの取り組み、親会社であるJR東日本の理解と支援も重要なファクターであると思います。

4.乗客もサポーター・当事者として参画する新幹線劇場

「サービス」という商品の有する大きな特性として、顧客との共同作業であるというポイントが挙げられます。この点に関して、例えば、コンサートや演劇で、聴衆・観衆の声援・応援や態度が、ステージにおけるパフォーマンスに影響を与えるとされますが、テッセイの新幹線劇場にも同様のことが言えます。つまり、乗客が、座席やトイレをきれいに使い、ごみ処理をきちんとすれば、テッセイのメンバーの作業はスムーズに行えますが、そうでなければ「7分間の奇跡」も難しいものになってしまいます。乗客はテッセイのサポーターのみならず、サービスの現場における「真実の瞬間」の参画者・当事者でもあるのです。

その意味で、テッセイのメンバーの礼儀正しく、きびきびした活動や、マスコミなどによる報道が、観衆たる乗客の理解や積極的なサポートを増すことになります。事実、筆者自身もテッセイを知るにつれ、ごみの捨て方や座席の使い方などにより留意するように行動が変化していると感じています。

読者の皆様も、次回、東北新幹線や上越新幹線を利用される際には、この新幹線劇場とテッセイのメンバーにご注目いただき、一緒により素敵なステージにしていただきたいと思っています。

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(本稿中の写真はJR東日本テクノハートTESSEI社の提供による)

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