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わが子が罪を犯したとき、母親の責任とは?

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高畑裕太容疑者が、群馬県前橋市内でビジネスホテルの女性従業員に対する強姦致傷容疑で逮捕された事件を受けて、母親で女優の高畑淳子氏が会見を開きました。

会見の内容は極めて常識的で、大勢の記者を前に弁護士の同席なしで一人立つ、勇気ある誠実な会見でした。同じ母親として心が痛くて見ていられないほどに誠実でした。わが子の性癖について尋ねられても言葉を選びながら答えていらっしゃるのはどれほど情けない気持ちだったでしょう。
その会見を受けて、テレビはじめメディアは彼女に好意的な方向を取るでしょう。「成人した息子が起こした事件に母親の責任は問えない」と明言するコメンテーターもいます。もちろんその通りです。が、しかし、彼女をマスコミが守れば守るほど被害者女性の心は傷つき、高畑容疑者の立場は微妙なことになりかねません。「家族問題」として客観視することも大切だと思います。これは芸能界にかぎったことではありません、一般の家族でも同じですが、芸能人の場合は、広く世間に対する影響力の大きさと家族構成や家族メンバーのパーソナリティが周知であるため論評されやすい立場にあります。

わが子が、親である自分の職業と同じ仕事を選んでくれるのは親としては嬉しいことです。だから、高畑淳子氏のように息子の芸能界デビューに際して方々へ頭を下げて頼み込むこともあるでしょう。
「あなたが不祥事を起こしたら、私(母)の仕事がなくなってしまう」と繰り返し諭すのも当然です。私事ですが、田舎で小さな塾を経営していた私の母は、私が幼稚園児の頃から、「あなた(私)がきちんとしないと、よそ様のお子様をお預かりしている私(母)の仕事に差し障る」と度々言っていました。それは親が自分の仕事を守りたいという面もありますが、それ以上に母親の仕事に誇りを持つ子に育ってほしいという願でもあるかもしれません。

一般的に、母親が仕事をするということは、父親のそれよりも「子育ての責任」が問われやすいため、「母親が仕事をしているから子どもがこのようになった」と安直な因果関係で揶揄されることのないよう、働く母親たちは懸命に子育てを行っています。
母親としては、子育てを振り返れと責められるのは何よりもつらいことです。

誤解を恐れずいえば、高畑容疑者は、幼い頃からある種の「育てにくい子」であっただろうと推察します。思春期での大きな反抗期や、彼のふだんの言動や性的に女性好きな態度から「やってはいけないことをやってしまうのではないかと、親として危惧はあった」と高畑淳子氏も語っています。
それは、被害者女性には大変申し訳ないことですが、母親の育て方の問題ではありません。例として不適切かもしれませんが、たとえば神戸で児童を殺傷した酒鬼薔薇聖人は、育て方が悪かったから酒鬼薔薇となったのではありません。
成人であっても未成年であっても、もちろん親の責任がないとはいえませんが、子どもが果たさなければならない責任もあります。

芸能界では、女優の子どもが覚せい剤事犯で逮捕起訴され母親が仕事を失うといった事件もありますが、逆に、女優である母親の財布からお金を盗むからと我が子を刑事告訴した母親もありますし、出版社を襲撃した息子に対して「死刑にしてやって」と言った母親もあります。ビッグネームの親の子であることを伏せてオーディションを受けデビューする子どももあります。
先日、某タレントとお話したとき「高畑容疑者の件で、僕たち二世(親が芸能人で自分も芸能人となった者)が、また悪く言われるかも。二世は二世で大変な思いもあるんだよ」とおっしゃっていました。

私たち母親は子どもを育てる過程で、高畑淳子氏と同じように「うそをつかないで、人様に迷惑をかけないで、人には感謝するのよ」と繰り返し伝えて育てます。
そして、この子が大人となったとき一個の社会人としてまわりから受け入れてもらえるよう、家庭でしつけをし、学校へ通わせ、母が食べてきた物より少しでも美味しいものを、栄養のあるものをと供し、母が見てきたものより良いものを見せたい、より良い体験をさせたいと、親として大真面目に子に尽くします。
そして、そこに客観的な視点を持っているか(子育てが独善的になってはいないか、子どもを所有物としていないか、など)をいつも自分に問いながら子育てをしている母親も多くあります。

子どもが育つ過程で、大きな怪我をせず、事件事故に巻き込まれず、事件事故を起こすことなく、まわりの人間関係を穏やかに保って子どもが成人を迎えるというのは、およそ奇跡にも等しいものです。親は子どもを信頼し、期待し、期待のあまり過保護過干渉となる母親もありますが、子どもが大過なく育ってくれる、そのありがたさを忘れてはいないでしょうか。

かりに優秀な子どもが育ったからといって、それは母親の手柄ではありません、子ども自身ががんばることができた結果です。もちろん、がんばることのできる環境作りを行い、努力を促すことのできた母親の根気も大切ですが、子ども自身ががんばる気持ちを持たなければ母親だけでは空回りしてしまいます。

それにしても、子どもが罪をおかしたとき、「あなたは母親として、どういった子育てをしてきましたか」と問われるほどの苦しみはありません。答えをさがしても見つけることのできない問いです。
高畑淳子氏の場合は母子家庭でしたので母親の子育てのみ問われると感じられますが、たとえ両親のいる家庭であっても、子どもが罪をおかした場合は、父親に子育ての意味を問うのではなく、母親のみに子育ての内容を問われることが多いのも現実です。

いずれにしても、高畑家は、今後強姦致傷事件で逮捕された長男を持つ「家族」として、被害女性への謝罪・賠償責任と、長男と母親の仕事への金銭問題含めた責任を果たし、刑に服する長男と将来の出所後の人生を含めて考え進めなければなりません。厳しいことです。
また、被害者女性と彼女の家族は、性犯罪被害を受けた傷を生涯抱えていかなければなりません。どれほど謝罪を受けても消えることのない傷です。これは被害者ではない者には理解できない苦しみでもあります。
当事者ではない、被害者でもない私たちは、被害者家族に対しても加害者家族に対しても、彼らを過剰に庇うことなく責めることもなく、各々がそれぞれの立場で人生に向き合っていくさまを静かに見守っていくしかありません。
ーーーーーー
高畑淳子氏の会見
(写真:オリコン)

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池内ひろ美

池内ひろ美

1961年生まれ。夫婦・家族問題評論家。家族問題コンサルタント。日本ペンクラブ会員。八洲学園大学教授(女子学・家族論)。
一般社団法人日本女子力推進事業団(Girl Power)代表理事。内閣府後援女性活躍推進委員会理事。一般社団法人全国危機管理推進事業団理事。一般社団法人国際教養振興協会顧問。
所属:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

■著作
『とりあえず結婚するという生き方』ヨシモトブックス
『大好きな彼に選ばれるための25の法則』スターツ出版
『結婚の学校』幻冬舎
『妻の浮気』新潮新書
『良妻賢母』PHP新書ほか(31作品)

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