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伊調選手のパワハラ問題に見るクソ上司と働き女子の関係性

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竹井善昭

プロデューサーGirl Power
ガールパワー・プロデューサー 株式会社ソーシャルプランニング代表取締役 マーケティング・コンサルタント メディア・プロデューサー

 

五輪四連覇の伊調馨選手に対するパワハラ問題

女子レスリングで五輪4連覇を成し遂げた伊調馨選手に対して、日本レスリング協会や、強化本部長で至学館レスリング部監督、伊調選手の元師匠でもある栄和人氏がパワハラを行っているとする告発文が、内閣府の公益認定等委員会に提出された。

週刊文春が報じたことにより、にわかにこのパワハラ疑惑はマスコミを賑わせることになっているが、1月に提出された告発文が、なぜ3月になって報じられたのか。

もしかしたら、ことがオリンピックに絡む問題だけに、平昌オリンピックが終わるまで待っていたのかもしれない。五輪開催前や開催中にスポーツ界のゴタゴタを報道されたくないJOCに対する忖度かもしれないし、単純に平昌の前に報じても、五輪報道にこの問題がかき消されてしまうとメディア側が判断したのかもしれない。告発状を出してもモノゴトが進展しないので、告発サイドの人間が週刊文春にたれ込んだのが、このタイミングだったのかもしれない。真相は不明だが、大ネタを掴んだ時、それをどのタイミングで報じれば最大効果が得られるか、メディアは常に考えるものだし、タイミングを伺っての今回の報道であれば、メディアはこの問題をけっこう突っ込んでやる気だと思われる。そうだとすれば、この問題はまだまだ大きくなり、誰かのクビを取らなければ収束しない可能性もある。つまり、栄氏の辞任まで追い込むつもりなのかもしれない。

このパワハラ疑惑に関しては、協会も栄氏も全面否定。両者の主張は真っ向対立しているので、今の段階では、パワハラがあったともなかったとも断じることはできない。ただ、報じられた内容から考えれば、これは単にアスリートの問題、スポーツ界だけの話ではないと思う。そこには、企業社会におけるハイスペック女子問題に共通する課題が見られる。

報道によれば、栄氏と伊調選手はそもそもソリが合わない関係だったという。

伊調選手は中学卒業後に、栄氏がレスリング部の監督を務める中京女子大学(現:至学館大学)附属高校に進学。高校、大学と栄氏の指導を受け、アテネ五輪、北京五輪で金メダルを獲得した。しかし、北京大会後、伊調選手は栄氏の元を離れ東京に移住。警視庁機動隊の練習場で男子に交じって練習。警視庁所属の田南部力氏のコーチを受け、ロンドン大会、リオ大会で金メダルを獲得、五輪4連覇の偉業を成し遂げるが、栄氏からのパワハラが始まったのは、伊調選手が東京に移住し、田南部コーチの指導を受け始めてからだという。

そのパワハラの内容は、簡単に言えば伊調選手が練習できなくするようなもの。彼女が練習場所としていた警視庁の練習場に出禁にしたり、田南部氏に「伊調のコーチをやめろ」と圧力をかけたりというもの。栄氏も協会も、このような嫌がらせや圧力をかけた事実はないと報道を否定しているので、いまのところ真相は不明だ。

しかし、似たような話は一般企業でもよく聞く。

クソ上司と働き女子の不幸な関係

前述のとおり、伊調選手は五輪4連覇を達成したトップ・アスリートだ。企業で言えば、社長賞を4度も獲った優秀なアラサー女子社員だ。間違いなくエース社員である。

普通に考えれば、このようなエース社員は上司にも可愛がられ、のびのび、生き生きと活躍しているものだが、案外とエースだからパワハラに遭うこともある。

エースに対してパワハラするようなクソ上司はなぜ生まれるのか?

もっとも多いのが、上司との方針の違いでぶつかることだ。エース社員は、独自のノウハウ、仕事の方法論を持っている。だからエースになれるのだが、その方法論と上司の考え方が食い違った場合、上司はエースを潰しにかかることがある。

伊調選手はアテネ、北京で二連覇を成し遂げた後、より高みを目指すために男子選手との練習を望み、警視庁の練習場でトレーニングを始めた。しかし、栄氏は女子選手が男子選手と練習することを嫌っていたという。

自分が育てた選手が、自分が嫌う練習方法をやる。コーチ、監督としてはおもしろいはずがない。しかも、伊調選手はその後も、ロンドン、リオでも金メダルを獲得。自分が否定した練習方法で結果を出したのだから、よけいにおもしろくない。このような場合、部下が結果を出したからこそ、パワハラが起きたりする。

女子の皆さんが想像している以上に、企業の男性管理職は男尊女卑の感情を持っている。若い女性社員が、抜群の成果を出すことを、内心ではおもしろくないと感じる男性管理職は多いと思う。

相性の問題もある。

伊調選手と栄氏は、そもそも相性が良くなかったという証言もある。

そもそも、二人はもともと、そりが合わないタイプの組み合わせだった、とレスリング関係者は言う。

「栄さんはすぐに手も口も出してしまうタイプ。しかも、説明もあまりうまくない。練習の最初と最後に全体に向けて話をするんですが、正直、何を言っているのか分からないことが多い。一方の伊調さんは、きちんと筋道をたてて物事を考えて話をしたい人。そして、一人で黙って考え込むことが多く、普段から言葉数も少ない。レスリングの話をするにしても、わかる言葉で理屈の説明をしてほしい伊調さんと、熱意と感情が先に出てくる栄さんでは、合わない部分のほうが多かったんじゃないですか」

伊調馨と栄和人氏 「パワハラ」めぐる主張が正反対の理由

これも、企業内で男性社員と女性社員の間で生じがちなケースだ。俗に、男性は論理的、女性は感情的と言われるが、最近は若い女性社員のほうが論理的で、男性管理職のほうが非論理的で感情的になることが多い。

男性管理職が非論理的になるのは、さまざまなしがらみがあって論理が破綻するからだ。意見が違う専務と本部長のどちらもたてなければいけない。会社の方針が現場の事情とそぐわなくても部下に仕事をさせなければいけない。整合性がとれるはずのないものを、無理にやろうとするので論理が破綻する。その破綻を、部下や取引先への押しつけで繕おうとする。そこにパワハラが生まれる。

男性上司のメンツや保身の問題から、優秀な女子社員を受け入れない場合もある。若い女性社員が大口取引先の役員に可愛がられたら、自分の立場がなくなるのでその女性社員に対して「俺の頭を飛び越して、あの役員と仲良くするな」と言って、邪魔するケースもある。

そもそも、女性社員を苦手とする男性管理職も多い。キャバ嬢やホステスとなら会話ができても、一般女性とは会話ができないという男性も多いのだ。だから若い女性とどのようにコミュニケーションしていいか分からない。そのような男性管理職も多いのだ。

このような場合、男性管理職に悪気がなくても、結果としてパワハラみたいなことが起きる場合もある。重要な仕事は男性の部下にしか回さないみたいなことだ。このようなケースでは、上司にも自覚がないので、自覚的なパワハラよりもたちが悪い。

栄氏も、マスコミの囲み取材で「パワハラした自覚はないが、相手がそう感じたならそうなのかもしれない」という趣旨の発言をしている。無自覚のうちに、伊調選手へのパワハラ的な行為をしてしまっている可能性もある。このようなケースが、企業でも起こりやすい。

クソ上司を生まないために「女性メンター制度」の導入を

そんなわけで、伊調選手のパワハラ問題。一般企業の女性社員にも起きやすい話なのだが、対処法は難しい。簡単に男性管理職のマインド・セットは変わらないからだ。

この問題を解決するためには、男性管理職の女性に対する苦手意識を払拭するしかなく、そのためには「女性慣れ」するしかないのだが、そもそも女性に対する苦手意識を持つ男性に、女性とのコミュニケーション能力を持たせることは、かなりハードルが高い。

そのハードルを越えるには、トレーニングするしかない。資生堂が、オヤジ役員のITリテラシーなどを高めるために、若手社員をメンターとしてつける「逆メンター制」を導入したが、同様に男性管理職に対する「女性メンター制」を導入するべきだと思う。

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竹井善昭

CSRコンサルタント、マーケティング・コンサルタント、メディア・プロデューサー。一般社団法人日本女子力推進事業団(ガール・パワー)プロデューサー。

ダイヤモンド・オンラインにて「社会貢献でメシを食うNEXT」連載中。
http://diamond.jp/category/s-social_consumer
◇著書◇「社会貢献でメシを食う」「ジャパニーズ・スピリッツの開国力」(共にダイヤモンド社)。 ◇翻訳書◇「最高の自分が見つかる授業」(Dr.ジョン・ディマティーニ著、フォレスト出版刊)

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