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僕が貧困女子よりハイスペック女子支援を優先させる理由

世の中に一般化しつつある「ハイスペック女子」というキーワード

前川前文科省事務次官の出会い系バー出入り問題でにわかに急上昇キーワードになった「貧困女性」。ことは当の女性だけでなく、子供の貧困や虐待の問題にもつながるだけに大きな社会問題だ。

ところで、僕はハイスペック女子問題にずっと取り組んでいる。最近ではこの「ハイスペック女子」という言葉もかなり一般化してきたようで、この言葉をタイトルに使った本も出ているし、ウェブ・メディアの連載タイトルに使っている人もいるし、「ハイスペック女子」で検索すると、かなり多くの人がこのキーワードを使ったブログ記事を書いている。

僕が「ハイスペック女子」という言葉を意識的に使ったのは、ダイヤモンド・オンラインでの連載「社会貢献でメシを食うNEXT」での「誰もが勘違いしている、福山雅治が結婚したホントの理由とは?」という記事が最初だ。2015年10月のことだ。

ネタをばらすと、この記事は世の中の人が「ハイスペック女子問題」にどこまで関心を持ってくれるか、共感してくれるかを知るための観測気球として書いた。ハイスペック女子問題を世に問いたいと考えていたところに、ちょうど福山雅治の結婚報道があり、世の中的に大きな話題になった。この結婚の話題からジョージ・クルーニーの結婚に話をつなげれば、うまくハイスペック女子のことが語れると考えてこの記事を書いた。観測気球なので「ハイスペック女子」というキーワードがどこまで読者に訴求できるか未知数だったので、タイトルにはこの言葉は入れていない。

ところが、僕の予想以上にこの記事は反響を呼んだ。しかも、当のハイスペック女子たちからの共感が凄かった。それで今度はキッチリと「ハイスペック女子」というキーワードをタイトルにした記事を書いた。これも大好評でしばらくこのネタを続けて書いた。それが一連の「ハイスペック女子」シリーズである。

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手前味噌で恐縮だが、世の中的に「ハイスペック女子」という言葉を使ってこの問題を指摘したのは、僕が最初ではないかと思うが、実はこの言葉は僕のオリジナルではない。ガールパワーのユース女子たちと、日本社会における若い女性の諸問題について議論する中でハイスペック女子問題が浮上した。つまり、ハイスペック女子という言葉が造語だとすれば、それは僕が作ったのではなくガールパワーのユース女子が作ったのである。

貧困女子よりハイスペック女子問題を優先させる理由

そんな経緯もあり、ガールパワーではハイスペック女子問題に熱心に取り組んでいる。

このような姿勢には批判もあるかと思う。東大や早稲田、慶應を出て一流企業に就職したような女子よりも、貧困女子の方を優先的に支援すべきではないかと思う人も多いだろう。

確かに貧困女子の問題は解決すべき大きな社会課題だ。しかし、社会課題の解決には優先順位というものがある。その優先順位はどうやって決めるかというと、近年の考え方では社会的なインパクトの大きさだ。つまり、支援に対する投資効果の大きさである。

たとえば、途上国の貧困の問題を解決する時に、男性を支援するより女性を支援する方が効果は大きい。

乱暴に言えば、男性を支援してお金を渡しても酒や女やばくちに使ってしまう。誰もがそうとも言えないが、たとえば隣村の愛人の元に通うためのバイクを買うために自分の娘を売るみたいなことを男性は平気でやるから、男性を支援して経済的に自立させても、儲かった金を自分のためにしか使わない傾向もあり、また、いまだに女性差別、偏見が強いがその問題も解決されない。

しかし女性を支援すれば、女性は自分で商売を初めて自立するようになり、自立した女性は子供を学校に行かせる。子供の教育が最も効果的な途上国支援であると言われているが、父親は女の子を学校に行かせないが母親は行かせるから、その意味でも女性の支援は効果が大きい。女性が自立し、その娘たちが教育を受けて社会進出すれば、女性に対する差別・偏見もやがてはなくなる。そうなれば、途上国で横行する集団レイプや幼児婚、名誉殺人、女性器切除などの諸問題も解決に向かう。波及効果が非常に大きいのだ。

では、日本の女性問題はどうか?

日本における女性問題は制度的なものより文化的な要因の方が大きい。

たしかに保育園問題に代表されるように、制度が十分だとは言えない。しかし、制度的にはかなり男女平等は進んでいる。にもかかわらず、ジェンダー・ギャップが大きいのは制度の問題ではなく文化の問題だ。

典型的な例が、産休・育休の問題で、大企業ではどこでもこの制度が整備されているが、実際には使いづらい。産休・育休を取ってキャリアが中断すると職場復帰が難しいとか、その後のキャリアに影響するとかの問題だ。しかし、これは制度と言うより文化の問題だと思う。企業文化はいまだに男性の論理に支配されているから、女性に対して十分な配慮が足りない。

「女性の社会進出=女性が働きやすい社会を作る」であるとすれば、大企業の管理職、経営者の大多数はいまだに男性なのだから、このようなエリート男性たちのマインド・セットを変える必要がある。しかし、日本のエリート男性たちのマインドはいまだに男尊女卑の「オレ様」志向だ。

エリート男性を食いまくり、その記録をツイートする「ちんぽの食べログ」で話題の「暇な女子大生」(暇女)という女子がいる。彼女が定義するエリート男性とは「東大、京大、東工大、一ツ橋、早稲田、慶應、医学部医学科の学生および卒業生」で、概ね日本の大企業の幹部社員もこの範疇に入る。それで、彼女に「エリート男性の女性観」について直接、聞いてみたことがある。回答は、

「自分の妻の給料が自分より1円でも高ければむかつく」

それがエリート男性共通のマインド・セットだという。

すなわち、エリート男性は本音のところでハイスペック女子が嫌いなのだ。

そして、ハイスペック女子が嫌いである背景には、女性に対するオレ様意識がある。千葉大学の医学部や東大の学生のようなエリート男性が集団レイプ事件を起こすのも「女なんてそんなもん」というオレ様目線があるからだ。

ここに僕らがハイスペック女子問題に取り組むべき大きな理由がある。

日本の社会を変えるためには企業文化を変える必要があり、そのためにはエリート男性のマインド・セットを変える必要がある。人のマインド・セットを変えるためには、そこに社会問題があることを理解させる必要があり、女性の社会進出を促すためには、ハイスペック女子たちがいかに不当な扱いを受けているか、男性たちの無理解に苦しんでいるか、顔所たちのポテンシャルがスポイルされているかを理解させる必要がある。その上で、マインド・セットを変える必要がある。

自分よりも学歴が上。給料が上。キャリアが上。そういう女性を素直にエリート男性がリスペクトできるようになれば、貧困女子やシングル・マザーや子育てで悩む女性たちへの目線も自然と変わるだろう。そういう状況を作っていく必要がある。だから僕らはハイスペック女子問題に取り組んでいる。

 

 

 

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竹井善昭

CSRコンサルタント、マーケティング・コンサルタント、メディア・プロデューサー。一般社団法人日本女子力推進事業団(ガール・パワー)プロデューサー。

ダイヤモンド・オンラインにて「社会貢献でメシを食うNEXT」連載中。
http://diamond.jp/category/s-social_consumer
◇著書◇「社会貢献でメシを食う」「ジャパニーズ・スピリッツの開国力」(共にダイヤモンド社)。 ◇翻訳書◇「最高の自分が見つかる授業」(Dr.ジョン・ディマティーニ著、フォレスト出版刊)

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