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「女性活躍推進」は無理ゲーなのか?

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竹井善昭

プロデューサーGirl Power
ガールパワー・プロデューサー 株式会社ソーシャルプランニング代表取締役 マーケティング・コンサルタント メディア・プロデューサー

「女性活躍推進」のなにが悪いのか?

「女性活躍推進は無理ゲー」という声がある。安倍政権の「女性活躍推進」政策に対する批判の文脈で語られることが多い。語っているのは主に女性と、女性向けメディアである。あるいは、ある種のブロガーだったりする。特に左翼寄りの人たちにが批判的に語る。

たとえば以下のようなタイトルのブログ記事もある。

「女性活躍」という言葉自体が差別であり、間違っている

こちらのブログ主は「2009年に60歳定年を迎えた労働活動家」という、まさに左翼ど真ん中の人だが、書き手の属性といい記事のタイトルといい、典型的な「女性活躍批判」記事だと思う。

ハッキリ言って僕は「女性活躍」の何が気に入らないのか、さっぱり分からない。

女性が社会で活躍できることはいいことではないのか? もちろん、女性に限らず、男性も、障害者も、LGBTQの人たちも大いに社会で活躍して欲しい。(注:LGBTに関しては最近、海外メディアではLGBTQと書く場合が多い模様。「Q」は「Questioning」または「Queer」、つまり「自分がどの性か分からない」とか「あいまい」という人たちのこと)

まあ、「女性の活用」と言われれば、「まるで男性が女性を活用すると言ってるみたいだ」と感じる女性も多いことは理解できる。「活用」と言ったときに、それはまるで、支配者が被支配者を人間ではなく単なる資源として「活用」する、といったニュアンスで受け取る人もいるだろう。
しかし、「女性の活用」と「女性の活躍」はやはり違う。僕もガールパワーの成長のために女性を活用しようとは思ってないが、女性には大いに活躍して欲しいと思っているし、大いに輝いて欲しいと思っている。

さて、「女性活躍推進は無理ゲー」論であるが、それは要約して言えば「女は働け産め育てろ介護せよ」の無理ゲーで「求めすぎ」という批判だ。

たしかに「働いて、子供を育てて、介護すること」はかなり負担が多いように感じる。しかし、それらを求められているのは女性だけではない。本来、男性にも求められるべきものなのだ。問題は、その役割を女性にだけ押しつけることにある。男性もまた子育ても介護も担うべきなのだ。
注)介護に関しては男性も介護に参加する人も多い。「働きながら介護する男女比」は13:16(http://biz-journal.jp/2015/08/post_11114.html)。ただし、介護、看護を理由に離職する男女比は約2:8で圧倒的に女性が多い。

ようするに、「女性活躍推進は無理ゲー」という時、多くの場合「女性たちにもっと働けって言うな!」みたいな文脈で語られる。

それはたしかに一理ある。

しかし、忘れて欲しくないのだが、女性たちの「働く権利」」は、それこそ多くの女性たちの血と汗と涙で勝ち取った権利なのだ。

女性たちの「働く権利」獲得の歴史。

昔は女性が働くことは難しかった。日本だけでなく欧米でもそうだった(今でもそうだ)。もちろん働く女性、職業婦人もいたが、多くの場合、男性のアシスタント的なことしかさせてもらえなかった。リーダー的に活躍していた女性はほんとうにまれだった。

昔はオフィスなどで男性社員が「うちの女の子に書類を持って行かせます」みたいなことを言っていたが、つまり「女の子」でもできることしか女性にはさせてもらえなかったのだ。

それが60年代に入り、ロックやヒッピー文化の台頭とともに男女平等、女性の自立が社会的イシューとなり、70年代に入り女性が働く権利を主張しはじめ、80年代に入ってようやく形式上とはいえ男女差別がなくなった。実質的にはまだ男女格差はあるが、とにかく今の「女性が働く権利」は、女性解放の象徴としてミニ・スカートが登場した頃から50年、シャネルが女性をコルセットから解放してから約100年、あるいはそれ以前からの、多くの女性たちが戦って勝ち得た権利なのだ。

60年代から80年代にかけて、僕自身は幼稚園から大学までを過ごした時代で、だからリアルにその時代を体験したわけではないが、時代の空気感みたいなものは知っている。

だから、安倍政権になって「女性が輝く時代」とか「女性活躍推進」とか言われて、それが政策になる。これはほんとうに時代が変わったなと感じるわけだ。

そこに至るまでには、ほんとうに多くの女性たちの苦しみと痛みと悔しさが刻まれている。

存在さえも消された天才女性科学者

たとえば、人類の偉業の中には、人間の月面着陸がある。アメリカが月にアポロ11号を送り込んだわけだが、アメリカのロケット開発は、第二次世界大戦後にドイツからアメリカに亡命したヴェルナー・フォン・ブラウン博士の功績ということになっている。たしかに、ブラウン博士は、アメリカの宇宙開発チームのリーダーだった。

しかし、当時のソ連との宇宙開発において、当初はアメリカは負けていた。燃料系統の問題を解決できず、ロケットを宇宙空間まで飛ばせなかったのだが、それを解決したのは、Mary Sherman Morganという一人の女性科学者である。

アメリカのノース・ダコタ州にある農家に生まれた彼女は、幼い頃、父親の世話や農場の仕事をするために学校に行かせてもらえなかった。それを女性教師が父親を脅すようにして彼女を学校に行かせる。そこから彼女は化学者となり、宇宙開発チームに加わる。そして、他の誰も解決できなかった燃料系の問題を解決する。アメリカのロケットはようやく宇宙に飛べるようになったのだ。

後にアポロ計画によってアメリカがソ連との宇宙競争に打ち勝つわけだが、その勝利に対する彼女の功績は大きい。彼女無しでは、アメリカは月面着陸どころか、ロケットを大気圏外に飛ばすこともできなかったかもしれない。少なくとも、ソ連都の開発競争でさらに大きな遅れを生じていただろう。最終的に負けていた可能性も高い。

しかし、ブラウン博士は宇宙開発の代名詞として歴史に名を刻んだが、彼女は名前だけでなく、その存在さえも消されてしまった。女性だったからだ。

彼女の存在は、当時、一緒に働いたロケット・サイエンティストたちの記憶の中にしか残らなかった。それが世に知られるようになったのは、ジャーナリストの息子が彼女の伝記を著したことによる。ほんの数年前のことだ。

働く権利を求めて戦う女性たちのドラマ「Good Girls Revolt」が話題に。

近年、Amazonはテレビ・ドラマの製作にも乗り出しているが、この10月から興味深いドラマ・シリーズの放映が始まった(現在はアメリカだけの模様)。「Good Girls Revolt」というタイトルだ。

簡単な割には訳しにくい英語だが、無理に訳せば「お嬢ちゃんたちの反乱」みたいな感じかな? 親や恋人から見て良い子である「Good Girls」と、「Revolt」(反逆、反乱)という言葉の対比が、ネイティブから見て意外性もあってキャッチーなのかもしれない。

で、このドラマの内容だが、アメリカの代表的雑誌「ニューズウィーク誌」を相手に、女性たちが働く権利を勝ち取るまでの戦いのドラマだ。70年代アメリカが舞台である。

当時、ニューズウィーク誌では、アイビー・リーグを卒業したハイスペック女子たちでさえ、アシスタント的な仕事しかさせてもらえなかった。記者や編集者にはけっしてなれなかったのだ。これは、そのことに対する不満から、職場における男女平等を訴えて裁判を起こした女性たちの物語である。

日本ではまだ視聴できないのが残念だが、レビュアーの評価も高く、ライバル誌のTIMEでも最新号(11月14日号)にて3ページにわたる紹介記事が掲載されるなど、アメリカでは注目されている。早く見たいと思っているが、とまれ、「女性活躍推進は無理ゲー」とか言ってる人たちは、それが多くの女性たちの無念や戦いの末に勝ち取ったものであることは忘れないで欲しいと思う。

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竹井善昭

CSRコンサルタント、マーケティング・コンサルタント、メディア・プロデューサー。一般社団法人日本女子力推進事業団(ガール・パワー)プロデューサー。

ダイヤモンド・オンラインにて「社会貢献でメシを食うNEXT」連載中。
http://diamond.jp/category/s-social_consumer
◇著書◇「社会貢献でメシを食う」「ジャパニーズ・スピリッツの開国力」(共にダイヤモンド社)。 ◇翻訳書◇「最高の自分が見つかる授業」(Dr.ジョン・ディマティーニ著、フォレスト出版刊)

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